修復腎移植の先進医療承認 厚労省の審査部会、条件付きで 10月19日に開かれた厚生労働省の先進医療技術審査部会で、徳洲会グループによる修復腎移植の先進医療申請が条件付きで承認されました。その条件とは▽実施責任医師は泌尿器科や腎臓の専門医らが担う▽ドナーの適格性を判断する委員会に徳洲会以外の外部委員を加えるーなどです。 これまでの審査部会では3度も申請が不承認とされてきましたが、徳洲会グループの度々の修正申請によって、承認にこぎつけました。日本移植学会の反対と誘導により厚労省が臨床研究を除く修復腎移植を禁止してから10年。ここに来て、やっと再開への道筋が見えてきました。 これも、徳洲会グループをはじめ、これまで多大のご支援、ご協力をいただいてきた多くの皆さまのおかげです。あらためて感謝を申し上げます。 このあと、厚労省では年明けにも上部組織の先進医療会議で審査があり、認められれば、5例の試験結果を踏まえて可否が判断されることになります。このうえは、一人でも多くの患者さんが救われるよう、一日も早い再開を願いたいと思います。皆さまには引き続きご支援、ご協力をよろしくお願いいたしたします。 #
by shufukujin-kaihou
| 2017-10-20 21:12
| 29.10.20緊急報告
NPO移植への理解を求める会 会報第25号
29年度(第9回)総会開く 「修復腎移植と患者の自己決定」 6月・松山 粟屋先生(岡山大学名誉教授)がご講演 NPO法人移植への理解を求める会の29年度(第9回)総会と記念講演会(えひめ移植者の会と共催)が6月18日、松山市山越町の愛媛県男女共同参画センター視聴覚教室で開かれました。 総会は午前11時に開会。20人余りが出席し、28年度の活動報告、決算報告、29年度の活動計画、予算案などを審議し、すべて原案通り可決しました。 この後、午後1時から始まった記念講演会では、まず岡山大学名誉教授の粟屋剛先生(現岡山商科大学教授・生命倫理)に「修復腎移植と患者の自己決定」をテーマで、ご講演いただきました。 粟屋先生は「かつて病院では医療者が上から目線で医療の内容を決定していた。いわゆるパターナリズム(父権主義、温情主義的権威主義)だ。しかし、今はアメリカで生まれた生命倫理の考え方か ら、パターナリズムに代わって患者の意思が優先される時代になってきた。インフォームド・コンセントはこれを保証するもの」と説明。そのうえで、修復腎移植について「医学的に妥当性であるかどうか、リスクがあるかどうかは関係なく、患者が『QOLの改善のために透析より修復腎移植を望む』といえば、これは認められるべきだ」として、修復腎移植を否定する医学界に疑問を呈されました。 (2ページ以降に講演要旨) マタス先生(国際人権弁護士)もご講演 続いて、国際人権弁護士のデービッド・マタス先生(カナダ在住)に「中国の『臓器狩り』について」のテーマで、ご講演いただきました。先生は中国共産党政府の非人道的な臓器狩りをストップさせるための調査と告発活動を続ける国際ネットワークの創設者で、通訳を同ネットワーク日本担当の鶴田ゆかりさんがされました。 先生は中国政府が法輪功のリーダーなど政府を批判する人たちを政治犯として処刑し、その臓器を収奪。日本人を含め渡航移植にやってくる患者に移植している実態を紹介されました。また日本に対して、医療者や患者が結果的に中国の臓器狩りに協力をしていること、その歯止めのための有効な対策を取っていないこと、国民の関心が薄いことなどを指摘し、もっと関心を持ってほしいと訴えられ ました。(マタス先生の講演要旨は次号でご紹介します)
講演要旨 ‹修復腎移植と患者の自己決定› 岡山大学名誉教授 粟屋 剛 先生 修復腎移植について、医学界は、医学的な妥当性がないという。しかし、仮にそうだとしても、だからといって修復腎移植を駄目だと言えるのかどうか。私は、最初から修復腎移植は容認されるべきだと思っていたわけではない。実は当初は、疑っていた。しかし、調べていくうちに、これは問題ないのではないかと思えるようになった。最初に断っておくが、もちろん、私は万波先生らとの利害関係はない。 その後、先生と知り合った後で分かったことだが、万波先生はお人柄など、とてもすばらしい。お金や利権や出世などばかりを考える人が多い世の中だが、先生はそれらとは無縁な人だ。私は尊敬する人はほとんどいないが、万波先生は、凡人である私には真似のできない、筆頭の尊敬の対象だ。 ▼医療は患者が決める時代に 具体的な修復腎移植の問題に入る前に、まず、一般論を述べる。私の考えは生命倫理の視点から来るものだ。私は生命倫理の一学者として、論理と倫理に従って考えを述べたい。 医療倫理は「医療」の「倫理」だが、生命倫理というのは「生命」の「倫理」ではない。Bioethics(バイオエシックス)という英語の訳語(造語)だ。つまり、生命倫理は倫理の一分野ではない。この点、誤解が多い。医療や生命科学などに関する倫理問題、法律問題、社会問題を学際的に扱うのが生命倫理だ。医療倫理と生命倫理は部分的に重なり合うものだ。 では、生命倫理のルーツは何か。昔は患者さんが病院などで手術を受けるかどうかは、患者さんではなく、医師が決めていた。いわゆるパターナリズムだ(これは後で少し詳しく述べる)。それはおかしい、ということで、アメリカでその考え方を変える運動が始まった。大雑把に言えば、それが生命倫理(バイオエシックスBioethics)のルーツだ。50年前のことだ。生命倫理が扱う対象は安楽死・尊厳死、脳死・臓器移植、生殖医療、医学研究、再生医療、遺伝子医療、人体論、人間論、優生学、エンハンスメント(能力強化)論、人間改造論等々、多岐にわたる。 生命倫理においては「人間の尊厳」(人間は他の動植物と比べて特別に尊厳ある存在だという考え)がその中核的概念の一つとなっている。もう一つは自己決定原理。個人の自己決定を尊重せよというわけだ。では自己決定とは何か。「自分のことは自分が決める」という、ごく当たり前のことだ。例えば、疲れて夜、歯を磨かずに寝る。すると、虫歯になる。しかし、大人になっていれば、それは周りからとやかく言われることではない。虫歯になるのは言わば自分の勝手、ひいては自業自得、自己責任というわけだ。 輸血を拒否することも、手術を受けないことも、すべて本人の自由。臓器移植を受けるかどうか、臓器提供をするかどうかも、基本的に、自分が決めることだ。自分の勝手だ。つまり、修復腎移植を含めて、臟器移植は自己決定の問題だ。しかし、それが今、少しおかしくなってきている。臓器の提供について、2009年の法律(臓器移植法)改正によって、嫌だと言っていない限り、提供させられてしまう可能性が出てきた(ただし、家族の同意は必要)。それは「自己決定権の空洞化」という現象であり、私はそこまでするのはよくないのではないかと考えている。 私には、無理して臓器を集めようとしているようにしか見えない。私は、それはやり過ぎだと考えている(外国にもそのような制度を持つ国もあるが)。臓器が欲しい側からはそこまでしてでも臓器を集めたいだろうけれど、もともと誰も臓器を提供する義務はないし、誰ももらう権利はない、というのが大原則のはずだ。 人体実験の被験者になるかどうかも、自分が決めることだ。「先生にはお世話になりましたから、多少めまいがするくらいの実験なら参加していいですよ」などというのは原則的には成り立ち得る。 ただ、「あいつは憎いから殺す」というのも自己決定だが、これは自己決定権の正当な行使ではない。いつ、どこで、誰と、どのように死ぬかも、基本的に自己決定の範疇のはずだ(「誰と」は半分、冗談だが)。もちろん、制約が多いのは当然だが。自殺は法的には自由だ。自殺ほう助は犯罪だが、自殺は犯罪ではない。ただし、倫理的には生命の軽視につながったり家族や愛する人を悲しませてしまったりするので問題があるのは当然だ。 性転換の問題については、今は手術で可能な時代となったが、「男でいるのは飽きた。女になりたい」といっても、現行法上は勝手にはできない。「性同一性障害」という認定を受けていることが必要だ。しかし、私は、性転換も基本的には自己決定の問題だと考えている。 入院手術の問題でも、患者が手術前日の夜中の12時に、「手術が恐くなったので帰りたい」と言えば、医療側は帰さざるを得ない。患者の治療拒否権(延命治療拒否権を含む)という自己決定権があるからだ。ただし、医療側はもちろん、生じた損害の賠償請求はできる。 自己決定と対立するものがある。それがさきほど触れたパターナリズム(父権主義、温情主義的権威主義)だ。パターナリズムとは、父親が、本人の意思にかかわらず子供の行動に上から目線で介入するようなことを指す。簡単に言えば、「悪いようにはしないから俺に任せておけ」というのが、パターナリズムだ。昔は日本でも外国でも、医師は患者さんに手術するかどうかについてあまり説明しなかった。それを決定するのは医師だった。現代では、医師は患者さんにきちんと説明して承諾を得なければならない(それは法的には医師の説明義務とか承諾取得義務とかと呼ばれる)。すなわち患者が決める時代になった。これはさきほど述べたアメリカのバイオエシックス(生命倫理)から入って来たものだ。この患者の自己決定権を担保するものがインフォ-ムド・コンセント(説明を受けた上での同意)と呼ばれるものだ。 生命倫理には自己決定では片付かないテーマもある。クローン人間を造っていいかどうかとか、山中教授のiPS細胞の技術で同一人物の精子と卵子を作り、それらを受精させて子供を造ることはどうかとか(これはクローン人間をつくるのと似たようなことになる)、遺伝子操作や受精卵の選択をして、より優秀な人のみを造り出すこととか。これらに明確な答えを出せる人は世界中に一人もいない。ここでは、文明論をベースとした新しい生命倫理、すなわち「文明論的生命倫理」の構築が必要になってくる。 ▼臓器移植とカニバリズム論 ところで、今、臓器移植だけではないが、「人体の資源化(ひいては商品化)」という現象がある。これは、程度の差はあれ、さきほど述べた「人間の尊厳」を侵害するものといえる。心臓の弁(一つ70万円程度)を取り換えれば助かるといったように、人間の体が部品、資源、商品になる。それが進むと「人間とは何か」といった根本的なこと、つまり人間の概念そのものが問われるようになる。 実は移植のコンセプトそのものには、疑問もある。皆さんは移植に大賛成で、あまり疑問を持っておられないと思うが、移植についてカニバリズム(人肉食)論を唱えた人がいる。輸血や臓器移植の形で血液や臓器を摂取しても、誰も何も非難はしない。しかしながら、カニバリズムとどこがどう違うのか、というわけだ。臓器移植は他者の体の一部を自己の体に取り込むという意味でカニバリズムと同じではないか、臓器移植の本質はカニバリズムだ、と。 文化は本質を隠蔽するのだ。昔、小学校の女の先生が子ども(小学生)に鶏をさばいて(殺して)食べさせる授業をしていて、大問題になった。その先生は、我々は他の動植物の命を奪って生きているという、命の本質を教えたかったのだ。しかし、そんなことをすると、子どもたちはそれがトラウマになって鶏肉を食べられなくなる。これは何を示唆するのか。人類は都合よく、文化(ここでは食事の文化)という形で野蛮という本質を隠しているのだ。 その話を移植医の先生にすると、「そうではない。提供した親族の腎臓は他人の体の中で生き続ける。すばらしいでしょう」と言われる。これは、良い悪いは別にして、アニミズム(精霊崇拝)的な発想だ。臓器のリサイクル思想だ。 臓器移植は欲望の産物であり、脳死問題を含めて批判はあるが、再生医療などの新たなテクノロジーが完成するまで、やめられない、とまらない。それはなぜか。より長く生きたいという欲望は人間にとって根源的なものであり、移植医療というテクノロジーはその欲望に奉仕するものだからだ。そもそも現代文明自体が欲望の充足システムであり、欲望の拡大再生産が進んで、とどまることを知らない。こうした状況を踏まえて、臓器移植を理解する必要がある。 臓器移植は、生とは何か、死とはなにか、人間とは何か、などといった根本的な哲学的問題を新たな視点から増幅させた。例えば、人間とは何か、に関してはこんな具合だ。人体は利用・交換できる「物」になった(物的人体論)が、人間は、将来的に人体冷凍保存技術が発達すれば、死んだら焼かないで冷凍保存され、必要なときに腎臓や心臓や血管や骨などを採り出す臓器貯蔵庫になってしまうのか、という具合だ。 臟器移植は具体的な倫理問題や社会問題も生み出した。大きい問題としては、臓器を誰に、どうやって分配するかという問題がある。例えばアメリカのシアトルという町に初めて透析機械が現れたときには、誰にどのような基準で透析を行うのか、ということで大きな議論を呼んだが、今、臓器を誰にどのように分配するのか、というのは大きな問題だ。アメリカのユーノス(UNOS:全米臓器配分ネットワーク)では、厳格に分配の法則を決めている。ただ、それでもインチキ(抜け駆け)する人がいる(いた)とも言われている。なお、日本でも、小児のアメリカへの渡航移植につき、順番飛ばし料(割り込み代)が噂されている(真偽のほどは定かではない)。 ▼医師より患者の意思が優先 前置きが長くなったが、背景を知っておいていただきたいので長々としゃべった。ここから本論に入る。最初に述べたように、修復腎移植は医学的妥当性がないという理由で否定された。しかし、患者の自己決定という視点からは、そのコンセプト(発想、概念)は肯定されそうだ。患者の自己決定という考え方は、先ほど述べたように生命倫理の中核概念だ。現在、日本でも患者の自己決定権は医療のさまざまな場面で定着しつつある。いわゆるインフォームド・コンセントは、まさに患者の自己決定権を担保するものだ。 病気腎、例えばがんの腎臓の全摘(全部切除)処置に医学的妥当性があるかどうかはケースバイケース。では、医学的妥当性がない場合、その処置は否定され、正当化されないのだろうか。そうではない。医学的妥当性がなくても、患者がきちんと説明を受けて納得し同意(承諾)していれば、すなわちインフォームド・コンセントがあれば、原則的に問題はない。もちろん、ドナーのインフォームド・コンセントも必要だ。例えば腎臓提供による諸種のリスクは、たとえそれがわずかであれ、必ず説明されなければならない。 ついでに言えば、摘出された腎臓はその時点では患者のものだ。そこで患者がいらないと言った時点で、誰のものでもなくなり、最初に自己の支配下に置いた人、つまり、占有した人のものになる。そういう民法上の原理(無主物先占の法理)がある。したがって、患者の腎臓の所有権放棄の意思が確認されるまで、医師はその腎臓を勝手に処分してはいけない。 がんの腎臓の摘出(切除)に関して、例えば医師が患者さんに「あなたの腎臓はがんに侵されている。その部分を摘出する必要がある。しかし、全摘する必要はない」と説明し、事実そうであったとする。そのとき患者さんは「そうはいっても転移するかもしれない。腎臓は二つあるので、一つで十分」という理由で全摘を決断した場合はどうか。その場合、医師が「全摘は医学的妥当性がない。それは愚かな決断だ」として部分切除するならば、それは正当化されない。なぜなら患者の同意がないからだ。一般論として、医師が患者さんの同意なく勝手に手術すると「専断的治療行為」として原則的に傷害罪が成立する。患者さんの決断が医学的に合理的でなくても、最終的には患者の意思が優先されなければならない。これがまさに患者の自己決定権だ。 逆に病気腎の全摘処置に医学的妥当性があっても、患者の同意がなければ、緊急の場合を除いて、その処置は正当化されない。さらに言えば、医学的妥当性がないのに、あると説明(虚偽説明)して患者の同意を得る(そして手術を実施する)行為は患者の自己決定権を侵害するものであり、倫理的に正当化されない。法的にももちろん、説明義務違反として損害賠償の対象となり得る。 一般論として、ある医学的処置によって治る見込みがない場合、その処置に医学的妥当性がないとはいえない。治癒しなくても、延命やQOL(生活の質)改善の可能性があれば、医学的妥当性はあると言わなければならない。例えば、仮に、提供された腎臓ががんで移植後再発の可能性が高い場合、そのような腎臓の移植は医学的妥当性がないと言えるだろうか。たとえ一時的でもQOLの改善があるなら医学的妥当性があると言えなくもなさそうだが、一般的には妥当性なしと判断されるだろう。ここではそれを前提にする。 では、がんの腎臓の移植は、医学的妥当性がないことを理由に否定されるのだろうか。倫理的に正当化されないのだろうか。そうではない。医学的妥当性がなくても、患者がそのことの説明をきちんと受けて納得、同意(承諾)していれば、すなわちインフォームド・コンセントがあれば、原則的には問題はないと考えられる。ここではもちろん、先ほど述べたように、ドナーのインフォームド・コンセントも必要だ。 例えば、修復腎移植では一定の確率でがんが再発するかもしれない(実際には確率1%以下とされる)が、患者が苦しい透析から逃れるために、あえて移植を選択するというケースを考える。仮にがんが再発して命が短くなるとしても、おいしいビールを飲んで普通の人と同じように暮らしたいと考える(私だったら、間違いなくそう思う)のだ。この場合、患者の意思が優先されなければならない。まさに自己決定の問題だ。リスクはもちろん、患者が引き受けるわけだ。つまり、自己責任だ。なお、医師の中には自己の信念から、そのような移植はしたくないと考える人がいるかもしれない。もちろん、そう考える医師は、そのような移植を強制されることはない。嫌だと思う医師はやらなければいい。 ▼修復腎移植の否定は疑問 個々の修復腎移植について、「がんが再発しないからその移植は正当化される」というわけではないことに注意する必要がある。つまり、その移植が正当化されるかどうかは、がんが再発するかどうかという医学上の問題ではなく、生命倫理、自己決定の問題なのだということを理解する必要がある。 つまり、がんが再発しないに越したことはないが、個々の修復腎移植でがんが再発したとしても、また、仮にがんが再発する可能性が高いとしても、インフォームド・コンセントがあれば正当化されるということだ。「がんが再発してもよい。それでも修復腎移植を受けたい」という患者さんの希望をなぜ医学界は受け入れないのか、というのが、私の根本的な疑問だ。 以上のように、患者の自己決定という視点からは、医学的妥当性がないという理由によって修復腎移植のコンセプトを否定することはできないと考えられる。 かつて、エホバ信者輸血拒否(東大医科研)事件というのがあった。「輸血すると悪魔が入ってくるから、輸血するくらいなら死んだほうがいい」との信念から患者は輸血を拒否した。しかし、医師は当該輸血処置に医学的妥当性があり、輸血しないと手術できないため、仕方なく輸血したという事件だ。患者が損害賠償を求めて訴訟になったが、わが国の最高裁は患者の自己決定権(ないし意思決定権)を優先させて患者の訴えを認めた。画期的な判決だった。
私は医療のあらゆる分野において、医学的妥当性よりも患者の自己決定権が優先すると考える必要があると思う。医学的妥当性がないという理由で患者の自己決定権を無視してしまうのはまさに、医療パターナリズムだ。 アメリカのバイオエシックス(生命倫理)は患者の自己決定権を武器に、医療パターナリズムと闘ってきた。基本的に、パターナリズムは自己決定権に道を譲らなければならない。修復腎移植の場合もまさにそうだと思う。 ただし、もちろん、移植医療を含め、医療においてパターナリズムが全面否定される謂われはない。高齢者が薬漬けになるケースでは「そんなに薬を飲まないほうがいいですよ」と、まさに、医師が上から目線でパターナリスティックに言ってあげる必要があると思う16。そんなときにだけ患者の自己決定権を尊重し、「患者さんが望むから薬を出してあげるんです」とするのはよくないと思う。自己決定権を悪用してはいけない。
あわや・つよし 1950年山口県美祢(みね)市生まれ。1969年山口県立大嶺高等学校卒業、1973年九州大学理学部卒業、1978年同法学部卒業、その後、宇部短期大学助手、西南学院大学大学院法学研究科博士課程、徳山大学経済学部教授等を経て、2002年4月より岡山大学大学院医歯(薬)学総合研究科生命倫理学分野教授。2016年3月、定年退職、同大学名誉教授。同年4月より岡山商科大学法学部教授、放送大学客員教授。 専門は生命倫理及び医事法。現在、日本生命倫理学会理事、日本人権教育研究学会名誉理事、日本医学哲学倫理学会評議員等。ほか、国際臨床生命倫理学会(International Society for Clinical Bioethics)副会長[前・会長]、アジア生命倫理学会(AsianBioethics Association)副会長[日本代表]。著書多数。
中国の『臓器狩りを考える会』開く4月・松山 NPO法人移植への理解を求める会と、えひめ移植者の会は4月16日午後、松山市総合福祉センターで「中国の『臓器狩り』を考える会」を開きました。中国政府の非人道的な臓器狩りを告発する国際ネットワーク制作の映画「知られざる事実」を観賞した後、同ネットワーク顧問のエンヴァー・トフティー氏(元外科医)が同ネットワーク日本担当の鶴田ゆかりさんの通訳で現状を報告。善良な市民を対象にした中国政府による「臓器狩り」が行われていること、その臓器を求めて中国に渡り移植を受ける日本人たち、その手引きをするブローカーや相談に乗る医師たちがいること…。結果的に中国の臓器狩りに協力しているこうした日本の現状を変えないといけないと訴えられました。
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by shufukujin-kaihou
| 2017-09-04 16:01
| NPO会報第25号(41号)
NPO移植への理解を求める会 会報第24号 先進医療またも継続審議 修復腎移植 徳洲会が3度目の申請 修復腎移植の先進医療適用の可否を審議する厚生労働省の技術審査部会が3月16日、東京・霞が関の同省で開かれ、NPO法人移植への理解を求める会から向田陽二理事長と野村正良副理事長が傍聴しました。残念ながら「3度目の正直」はならず、昨年8月に続く徳洲会グループの3度目の申請は、またも継続審議となりました。 深刻なドナー不足のため移植のチャンスがなかなかやって来ない透析患者の皆さんにとって失望感は大きく、10年余り運動を進めてきた私たちも「海外では絶賛されているのに、なぜだ」と怒りを抑えられません。いまだに先頭に立って反対する日本移植学会の無理解、理不尽さをのろわしく思います。徳洲会の安富祖副理事長は「患者のみなさんに申し訳ない。あきらめずに継続して努力する」とコメントしました。私たちも、一日も早く修復腎移植が再開されるよう、後押しをしていきたいと思います。 新聞報道から ▼病気腎再び継続審議 先進医療指定「評価体制不十分」 宇和島徳洲会病院(宇和島市住吉町2丁目)が臨床研究を進めている直径4センチ以下の小径腎がんを用いた「病気腎(修復腎)移植」について、費用の一部が保険適用となる先進医療指定の可否を判断する厚生労働省・先進医療技術審査部会(山口俊晴座長)の2度目の審議が16日、東京・霞が関の同省であった。2016年8月の前回審議で出た指摘を踏まえた研究計画の修正を評価しつつ、結果の評価体制などに「不十分な点がある」として再び継続審議となった。 病院側は前回指摘を踏まえ、申請医療機関を実質責任医師のいる東京西徳洲会病院に変更。「腎臓摘出へ誘導されかねない」「患者に分かりにくい」などとされたドナー(提供者)やレシピエント(移植者)への説明文書を見直し、ドナーとなり得る対象を「腎部分切除が困難」な場合に限定するなどとした。 部会には医療や法曹分野の14人が出席。修正を受け「一歩前進」としたが、研究計画で定めた 移植の有効性や安全性の評価方法などに曖昧な点が多く、院内の倫理委員会の体制にも改善すべき点があるなどと指摘。再修正を求めた。 徳洲会の安富祖久明副理事長は「一生懸命対応してきたのに非常に残念だ。臨床研究で修復腎移植をしてきたが、(移植者は)6、7年たっても人工透析をせずに済んでいる。継続審議は透析で困っている患者に申し訳ない」とした上で「指摘を点検し、諦めずに継続して対応する」と語った。 NPO法人「移植への理解を求める会」(松山市)の向田陽二理事長(59)は「期待していただけにショックは大きい」と早く認めるよう要望。えひめ移植者の会の野村正良会長(67)は落胆の表情で「米国など海外では修復腎移植が評価されており、日本も患者のことを考えて一日も早く前向きにとらえてほしい」と訴えた。(伊藤絵美、松本尚也) (3月17日付愛媛新聞) 6月・松山で第9回定期総会 「修復腎移植と患者の自己決定権」 岡山大学名誉教授 粟屋剛先生がご講演 NPO法人移植への理解を求める会の平成29年度(第9回)定期総会を6月18日(日)午前11時から、松山市山越町の愛媛県男女共同参画センターで、また記念講演会を午後1時から同センターで開きます。講演会は当会の推進母体となっている、えひめ移植者の会(野村正良会長)との共催です。 定期総会では、前年度の活動報告、決算報告、本年度の活動計画、予算案などを審議します。 参加対象者の理事と正会員の方は、よろしくお願いします。 講演会では、まず岡山大学名誉教授で現在、岡山商科大学教授の粟屋剛先生(生命倫理学、医事法)に「修復腎移植と患者の自己決定権」のテーマで、お話しいただきます。先生は、海外での臓器移植の事情に詳しく、また修復腎移植の問題については「患者の自己決定権の視点から肯定されうる」として、求める会の活動にご理解、ご支援をいただいています。 講演の趣旨(粟屋先生のコメント) 修復腎移植は「医学的妥当性がない」という理由で否定されてしまう(倫理的に正当化されない)ものであろうか。「患者の自己決定」という視点からは、むしろ、修復腎移植―とりわけ、そのコンセプト―は肯定されそうである。 この「患者の自己決定」という考え方は、アメリカ流の生命倫理(バイオエシックス)の中核概念である。現在、日本でも「患者の自己決定(権)」は医療のさまざまな場面で定着しつつある。なお、いわゆる「インフォームド・コンセント」はまさに、患者の自己決定権を担保するものである。 本講演では、この「患者の自己決定」という視点からは修復腎移植のコンセプトは肯定されうる(倫理的に正当化されうる)ということを述べてみたい。 あわや・つよし 1950年山口県美祢(みね)市生まれ。1969年山口県立大嶺高等学校卒業、1973年九州大学理学部卒業、1978年同法学部卒業、その後、宇部短期大学助手、西南学院大学大学院法学研究科博士課程、徳山大学経済学部教授等を経て、2002年4月より岡山大学大学院医歯(薬)学総合研究科生命倫理学分野教授。2016年3月、定年退職、同大学名誉教授。同年4月より岡山商科大学法学部教授、放送大学客員教授。 専門は生命倫理及び医事法。現在、日本生命倫理学会理事、日本人権教育研究学会名誉理事、日本医学哲学倫理学会評議員等。ほか、国際臨床生命倫理学会(International Society for Clinical Bioethics)副会長[前・会長]、アジア生命倫理学会(AsianBioethics Association)副会長[日本代表]。 2006年11月、第18回日本生命倫理学会年次大会を主催。2011年11月、第41回日本医事法学会年次大会を主催。ほか、日本国内にて複数の国際学会を主催。 1990年代、EBB(Evidence Based Bioethics) を標榜し、インド、フィリピンにおける臓器売買、中国における死刑囚からの臓器移植、アメリカにおける人体商品化などについての実態調査を行う。インドの臓器売買調査については、ワシントンポスト紙やロサンゼルスタイムズ紙にも紹介されている。中国の死刑囚移植については、1998年6月、アメリカ連邦議会(下院)に招かれ、証言及び意見陳述を行う。アメリカの人体商品化調査等については概要を『人体部品ビジネス』(1999年、講談社選書メチエ)に報告している。 著書は、単著、編著、共著を含めて約40冊。単著論文約100篇。それらの一部は、北海道大学、山口大学、高知大学などの入学試験問題としても使われている。最近では、2007年1月、アメリカの「生命倫理百科事典(Encyclopedia of Bioethics)」全5巻3000頁の翻訳[約300人の分担翻訳]を編集代表として出版。その後、生命倫理学の最高峰とされる 「シリーズ生命倫理学 全20巻」 [総執筆者約250人] を編集代表としてリリースした(2013年配本完結)。 教育面においては、教材として「生命倫理学/医療と法 講義スライドノート」を開発したほか、学生が選ぶ第1回岡山大学ベストレクチャー賞(講義名:生命倫理学入門[オムニバス形式])を受賞(2013年11月)した。 社会活動(社会貢献)としては、2013年に主催した生命倫理国際シンポジウム(北海道釧路市)をきっかけに、北海道釧路市や釧路市医師会とタイアップして国際生命倫理サマースクールを総責任者として開催(年1回、8月)している。また、生命倫理の専門家として内閣府に招かれ講演したほか、科学研究費助成事業の審査委員も長く務めるなどしている。 「中国の『臓器狩り』について」 カナダの弁護士 D・マタス先生もご講演 粟屋先生のご講演に続いて、受刑者の生体、死体から臓器を収奪し、移植(臓器売買)をしている中国政府の「臓器狩り」をストップさせるための活動を進めている「中国での臓器収奪停止EOP国際ネットワーク」の創設者、デービッド・マタス先生(弁護士、カナダ在住)に「中国の『臓器狩り』について」(仮)と題し、お話しいただきます。 マタス先生は今年6月に来日し、国内で講演活動を予定しています。そこで当会の総会に合わせて、松山でもご講演をお願いすることになりました。 デ-ビッド・マタス 国際人権弁護士。カナダ・マニトバ州ウィニペグ在住。 2010年、カナダの民間では最高栄誉に当たるカナダ勲章を 受章。同年、アジア外交担当大臣デービッド・キルガ-氏とともにノーベル平和賞受賞候補にノミネートされる。 同氏とともに、2006年初め、国際人権団体の依頼を受けて、中国強制収容所における収監者からの臓器摘出売買の実態を調査。 2007年、 52件の医師や被害者の証言・証拠に基づいてまとめた調査報告書「戦懐の臓器狩り」を発表。続いて書籍「中国の移植犯罪国家による臓器狩り」「中国臓器狩り」を出版。同著書の中で、 2000年から2008年までに「無実の囚人」 6万5000人が臓器移植のために生体のまま臓器を収奪され殺害されたと指摘。さらに臓器狩りの犠牲者は主に中国共産党から迫害を受けている法輪功学習者であると断言している。 <NPO法人移植への理解を求める会総会&記念講演会> と き 6月18日午前11時~午後3時 とこ ろ 松山市山越町450番地 愛媛県男女共同参画センター (☎089-926-1633) 内 容 ○総 会 午後3時~4時 平成28年度活動報告/決算報告・監査報告 平成29年度活動方針案 予算案審議 /その他 ○記念講演 午後1時~3時 講 師 粟屋 剛先生(岡山大学名誉教授、岡山商科大学法学部教授) テーマ 「修復腎移植と患者の自己決定権」 講 師 デービッド・マタス先生(弁護士、EOP国際ネットワーク創設者) テーマ 「中国の『臓器狩り』について」 問い合わせ 河野和博事務局長まで。電話089-970-3943 ……………………………………………………………… 中国の「臓器狩り」を考える会 国際ネットワーク 4月16日、松山で上映会 中国政府の「臓器狩り」をストップさせるための活動を続けているEOP国際ネットワークによる上映会と交流会を下記の通り、4月16日午後3時半から、松山市若草町の市総合福祉センターで開きます。 同ネットワークによると、中国の非人道的な移植の恩恵を受けている日本人は少なくないとみられています。さらに、中国の移植医は日本で移植医療を学んだ人たちで、免疫抑制剤も日本から輸入しているとのことです。これでは、日本が中国の非道な移植に手を貸しているようなものです。私たちが訴えている修復腎移植の再開に反対し、一方で、中国に渡って移植を受ける日本の人たちの便宜を図っている医療関係者がいるとしたら、私たちはこれを見過ごすことはできません。 同ネットワークはNPO法人移植への理解を求める会とその推進母体である、えひめ移植者の会の存在を知り、私たちとの接触を求め、中国の「臓器狩り」を告発するDVD「知られざる事実」の上映会と交流会の開催を打診してこられました。そこで「中国の『臓器狩り』を考える会」として会を開くことになりました。ご案内が遅くなりましたが、皆さんのご参加を期待しています。 <中国の「臓器狩り」を考える会> と き 4月16日午後3時半~ と こ ろ 松山市若草町8-2 市総合福祉センター5階・母子児童交流室 電話089-921-2111 内 容 「知られざる事実」上映会と交流会 講 師 エンヴァー・トフティー氏(元外科医、EOP国際ネットワーク顧問) 通 訳 鶴田ゆかり氏(同ネットワーク日本担当) 主 催 NPO法人移植への理解を求める会、えひめ移植者の会 問い合わせ 河野和博事務局長まで。電話089-970-3943
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by shufukujin-kaihou
| 2017-04-14 09:55
| NPO会報第24号(40号)
NPO移植への理解を求める会 会報第23号 10年過ぎた修復腎移植推進活動 学会今もかたくなに否定 求める会高原前理事長らに質問状 移植への理解を求める会(2008年6月にNPO法人化)が修復腎移植の推進を訴え、2006年11月に活動をスタートしてから10年が過ぎました。しかし日本移植学会は今もかたくなに修復腎移植を否定し、私たちの訴えを無視し続けています。 ご承知のように、学会の猛反対によって厚生労働省は2007年7月、臓器移植法のガイドラインを改正し、臨床研究を除き、修復腎移植を原則禁止としました。 それまで修復腎移植は、万波先生らのグループによって保険診療として進められていました。しかし、2006年10月に宇和島徳洲会病院で起きた臓器売買事件の捜査の過程で表面化したことから、異常反応した移植学会が偏見と予断で激しく批判し、関連3学会とともに「現時点では医学的妥当性がない」とする共同声明を発表しました。これを鵜呑みにした厚労省が十分な検討をすることなく原則禁止にしたというのが現実です。 この措置に対し、私たちの会をはじめ、支援してくださる「修復腎移植を考える超党派の国会議員の会」(会員約70人)や愛媛、香川、宮城の各県議会などが修復腎移植の再開を求める意見書を厚生労働相に提出しました。厚労省はこうした動きに対し態度を軟化させ2009年1月、臨床研究を促す通達を全国の都道府県や政令都市に送付しました。これを受け、徳洲会グループが同年12月から臨床研究に着手し、現在までに第三者間13例、親族間4例計17例の修復腎移植を実施しています。 しかし、保険診療による日常的医療としては、いまだに再開のめどが立っておらず、助かるはずの多くの患者さんが次々と見殺しにされています。こうした事態を見て見ぬふりの学会の責任は極めて重大です。 一方、海外では万波先生らの論文発表により、修復腎移植が「ドナー不足を解消するすばらしい医療」と絶賛され、オーストラリアではクイーンズランド大学のデビッド・ニコル教授らが修復腎移植を日常的に実施し、成果を上げていることが報告されました。また米国ではUNOS(全米臓器配分ネットワーク)が修復した臓器利用の有効性を認め、昨年4月から国を挙げて修復腎移植などの推進に乗り出しています。 こうした状況にもかかわらず、日本移植学会はいまだに「ドナー、レシピエント双方にリスクを与える恐れがある」などとして、反対を続けています。移植医療を率先して推進するべき立場の移植学会が、この問題と真剣に向き合おうとせず、この10年間、まるで他人事のように放置してきたことは、移植を切望する患者にとって理不尽この上なく、不可解な態度としか言いようがありません。 さらに、徳洲会グループが臨床研究の成果をもとに、2011年10月と昨年6月の二度にわたり厚労省に先進医療の申請をしましたが、初回には、学会が厚労省に対し「申請を認めないように」との意見書を提出し、妨害工作をする始末です。また先進医療採否の審査では、厚労省が委嘱した担当委員らが学会と口裏を合わせたように反対の主張を繰り返しています。こんな審査の方法では何年たっても申請は認められそうにありません。 厚労省は学会の息のかかったような委員の選任や審査の方法を抜本的に改め、その場で真剣な議論ができるようにすべきだと思います。 求める会は、日本移植学会の厚い壁を跳ね返すため、やむを得ず学会幹部5人を相手取った訴訟を患者有志に呼びかけ、これを全面的に支援する活動も進めてきました。訴えの趣旨は、幹部らが虚偽の発言により、修復腎移植の悪宣伝をして厚労省の禁止を導き、患者の生存権と医療の選択権を侵害したというもので、修復腎移植の妥当性を証明し、学会の態度を変えさせるのが目的でした。 2008年12月の提訴から7年余りを費やしたこの訴訟は、残念ながら一審、二審とも原告の敗訴に終わりました。また訴訟の準備の段階から結審までの間に原告を予定していた2人と、原告7人のうちの4人の方々が相次いで亡くなるという悲しい事態が起きました。皆さん、修復腎移植に望みを託し、元気になって社会復帰したいと切望していました。その無念の思いを私たちは決して忘れることはできません。この方々の遺志を受け継ぐためにも、また多くの患者さんが一日も早く救われるためにも、修復腎移植が再開される日まで、私たちは引き続き粘り強い運動を続けていく考えです。また10年の活動の軌跡を詳細に記録し、今後の活動に生かしたいと考えています。 そこで、あらためて移植学会に対する疑問をただすため、昨年11月から12月にかけて、高原史郎前理事長ら関係者4氏に相次いで質問状を送付しました。その内容をご紹介したいと思います。ちなみに回答が返ってきたのは1人だけで、それもまったく内容のないものです。相変わらず誠実 な対応をされない学会幹部の態度にあきれてものが言えません。 修復腎移植の有効性認めながら沈黙 ニコル論文紹介した公文・堀江両氏 新見公立大学副学長の公文裕己氏(前岡山大学医学部教授=泌尿器科)と堀江重郎氏(順天堂大学医学部・大学院医学研究科教授=同)は、2004年5月にサンフランシスコで開かれた第99回全米泌尿器学会に出席し、オーストラリアのデビッド・ニコル教授が発表した修復腎移植の論文を日本にいち早く紹介しています。公文氏は同学会のハイライト集の編集幹事を、堀江氏はこのハイライト集に掲載されたニコル教授の論文の翻訳、解説を担当し、ともに修復腎移植の有効性についてコメントしています。 つまり、万波先生らが進めていた修復腎移植を、日本移植学会の幹部が「見たことも聞いたこともない医療」「人体実験だ」などと非難していたとき、二人は既に米国の学会で発表されていたニコル教授の修復腎移植論文を紹介し、その有効性を指摘していたのです。 しかし、学会が激しい非難を繰り広げるなかで、何ら発言せず沈黙したと想像されます。あるいは学会関係者から強く口止めをされたのかもしれません。いずれにせよ、このとき、両氏がニコル論文のことを発言していれば事態は大きく変わっていたかもしれないだけに、残念でなりません。そこで、両氏に当時、どんな対応をされたのか、どんな事情があったのかを聞くため質問状を送付しました。 公文氏への質問状 平成28年11月14日 新見公立大学副学長 公文 裕巳様 修復腎移植に関する質問について NPO法人移植への理解を求める会 理事長 向田 陽二 拝啓 医学の普及と発展のために、先生が日ごろ多大のご努力をされていることに対し、心から敬意を表します。 さて、突然このような文書をお送りする失礼をお許しください。 私たちは慢性腎不全患者の救済に大きな期待が寄せられている修復腎移植の再開を訴え、2006年11月、移植への理解を求める会(事務局・松山市、会員1400人)を結成し(2009年8月にNPO法人化)、署名活動をはじめ厚労省への陳情、講演会、シンポジウムの開催などさまざまな活動を進めてきました。 ご承知の通り、2008年12月には修復腎移植再開を切望する透析患者と移植者計7人が、日本移植学会幹部の先生方5人を相手取り、「虚偽の発言によって修復腎移植の妥当性(安全性と有効性)を否定し、厚労省による禁止を誘導、患者の生存権と選択権を侵害した」として松山地裁に提訴し、私たちの会がこの訴訟を全面的に支援してきました。結果は、一昨年10月、同地裁が原告の訴えを棄却、二審の高松高裁も今年1月、同様の判決を下し、原告の敗訴に終わりました。 しかしながら、もともと保険医療で認められていた修復腎移植が禁止となり、多くの透析患者が見殺しにされている現実は絶対に容認できないことであり、私たちは修復腎移植が一般医療として再開されるまで、引き続き粘り強い運動を続けていくつもりです。 そこで、今後、活動を進めていくに当たって、先生にぜひ教えていただきたいことがあり、この文書をしたためました。 一昨年2月25日、松山地裁での証人尋問に出廷された日本移植学会広報委員長の吉田克法先生は、原告側弁護人に修復腎移植に関する海外の事例を問われ、オーストラリアのデビット・ニコル医師が実施した45例の修復腎移植について「(ニコル医師の)論文は、我々もすぐに入手して、移植学会でも取り上げた」と証言されました。 しかし当時、日本移植学会副理事長だった大島伸一先生は、吉田先生とはまったく異なる発言をされています。大島先生に取材したノンフィクションライター・高橋幸春氏の著書「透析患者を救う! 修復腎移植」(彩流社)によると、ニコル医師の論文が掲載された第99回全米泌尿器科学会(2004年、サンフランシスコで開催)のハイライト集を、高橋氏が大島先生に提示したところ、先生は「(論文を)初めて見る」と答え、「不勉強と批判されても仕方ない。当時、そうした情報が上がってきたという記憶もない」と述べておられます(高橋氏のこの著書は裁判で証拠採用されました)。 また一昨年3月18日、松山地裁での本人尋問に出廷し、高橋氏の著書について「事実関係に問題(事実とは異なる記述)があるかどうか」と原告側弁護士に問われると、「一言一句正確かと言われれば自信はないが、書いてある内容に、私としては、違和感はない」と答え、第99回全米泌尿器科学会のハイライト集については「知らなかった」と証言されました。 公文先生は、このハイライト集の編集幹事を務め、ニコル論文について「移植の領域では、移植免疫に関する研究のほかに、腎癌の小病巣が偶発発見され摘出された腎臓は腎移植の供給源となりうるという報告や(中略)臓器不足の解消や適応の拡大に取り組む移植医の努力と苦悩がうかがわれた」とコメントを記されています。 そこで次の二つの質問について、先生にご回答をいただきたいと思います。 <質問1> 2006年11月、宇和島徳洲会病院の万波誠先生らが実施していた修復腎移植が臓器売買事件の調査過程で表面化すると、日本移植学会が厳しく批判し、新聞や週刊誌が「事件」としてセンセーショナルな報道を続けたのはご承知の通りです。当時、大島先生は修復腎移植について「見たことも聞いたこともない医療」などとマスコミに発言されました。 一方、前述のハイライト集に記された公文先生のコメントによると、先生は修復腎移植の可能性について十分認識されていたと思われます。修復腎移植が日本移植学会の批判を浴び、大騒動となっている折、先生はこのハイライト集を日本移植学会に送付するなどして、ニコル医師の論文を学会関係者に紹介されたのでしょうか。もし、そうされなかったとしたら、なぜされなかったのか、その理由をお教えください。 <質問2> ニコル論文の翻訳を担当された堀江重郎先生に、当時、マスコミ数社の記者が取材を申し入れたところ、移植学会の関係者からニコル医師の移植についてはコメントを控えてほしい旨の連絡が先生にあったことを告げられたと伝え聞いています。 公文先生にも同様に、ニコル論文へのコメントについて移植学会関係者から何らかの働きかけがあったのでしょうか。お教えください。 7年余りを費やした修復腎移植訴訟は原告の敗訴に終わりました。提訴直前には原告を予定していた2人が亡くなり、原告団に加わった仲間も、7人のうち4人が係争中に相次いで亡くなりました。全員、透析患者で「修復腎移植を受け、元気になって社会のお役に立ちたい」と強く望んでいました。 修復腎移植が禁止されてほぼ10年。この間に修復腎移植が再開されていたら、皆さんの多くが助かっていたはずです。そのことを思うと無念でなりません。これら仲間の遺志を受け継ぐためにも、移植を待ちわびている多くの患者の皆さんのためにも、私たちは運動の継続とともに、活動の詳細な記録を残しておく必要性を強く感じています。 以上、私どもの思いをご理解いただき、どうかご協力をよろしくお願いいたします。 なお、ご多忙中、まことに恐縮ですが、この文書到着後2週間以内にご回答をいただければ幸甚です。 敬具 →回答なし 堀江氏への質問状 平成28年11月14日 順天堂大学医学部・大学院医学研究科 教授 堀江 重郎様 修復腎移植に関する質問について NPO法人移植への理解を求める会 理事長 向田 陽二 拝啓 医学の普及と発展のために、先生が日ごろ多大のご努力をされていることに対し、心から敬意を表します。 (中略=公文氏への質問状と同文) 堀江先生はこのハイライト集に掲載されたニコル論文の翻訳を担当し、この論文について「移植希望の透析患者が家族にいるT1腎がん患者では今後ドナーのオプションになるかもしれない」と、コメントを記されています。 そこで次の二つの質問について、先生にご回答をいただきたいと思います。 <質問1> 2006年11月、宇和島徳洲会病院の万波誠先生らが実施していた修復腎移植が臓器売買事件の調査過程で表面化すると、日本移植学会が厳しく批判し、新聞や週刊誌が「事件」としてセンセーショナルな報道を続けたのはご承知の通りです。当時、大島伸一先生は「見たことも聞いたこともない医療」などとマスコミに発言されました。 一方、前述のハイライト集に記された堀江先生のコメントによると、先生は修復腎移植の可能性について十分認識されていたと思われます。修復腎移植が学会の批判を浴び、大騒ぎとなっているとき、先生はこのハイライト集を日本移植学会に送付するなどして、ニコル論文を学会関係者に紹介されたのでしょうか。もし、そうされなかったのなら、その理由をお教えください。 <質問2> 当時、マスコミス数社の記者が堀江先生に取材を申し入れたところ、移植学会の関係者からニコル医師の移植についてはコメントを控えてほしい旨の連絡が先生にあったことを告げられたと伝え聞いています。移植学会関係者から先生に、どのような働きかけがあったのか。お教えください。 7年余りを費やした修復腎移植訴訟は原告の敗訴に終わりました。提訴直前には原告を予定していた2人が亡くなり、原告団に加わった仲間も、7人ののうち4人が係争中に相次いで亡くなりました。全員、透析患者で「修復腎移植を受け、元気になって社会のお役に立ちたい」と強く望んでいました。 修復腎移植が臨床研究を除き、禁止されて10年。この間に修復腎移植が再開されていたら、皆さんの多くが助かっていたはずです。そのことを思うと、無念でなりません。仲間の遺志を継ぐためにも、移植を待ちわびている皆さんのためにも、私たちは運動の継続とともに、活動の詳細な記録を残しておく必要性を強く感じています。 以上、私たちの思いをご理解いただき、ぜひご協力をよろしくお願いいたします。 なお、ご多忙中、まことに恐縮ですが、この文書の到着後2週間以内にご回答をいただければ幸甚です。 敬具 →回答なし 「ニコル論文、即取り上げた」は本当か吉田氏 日本移植学会広報委員長の吉田克法氏(奈良県立医科大学附属病院教授=泌尿器科)は松山地裁での修復腎移植訴訟の証人尋問で「ニコル教授の修復腎移植の論文をすぐに入手し、移植学会でも取り上げた」と断言しました。しかし、当時、学会副理事長だった大島伸一氏は同訴訟の本人尋問で「(論文を)初めてみる」と発言しています。この矛盾を明らかにするため吉田氏に聞きました。 吉田広報委員長への質問状 平成28年11月14日 日本移植学会広報委員長 吉田 克法様 修復腎移植に関する質問について NPO法人移植への理解を求める会 理事長 向田 陽二 拝啓 医学の普及と発展のために、先生が日ごろ多大のご努力をされていることに対し、心から敬意を表します。 さて、突然このような文書をお送りする失礼をお許しいただきたいと思います。 私たちは慢性腎不全患者の救済に大きな期待が寄せられている修復腎移植の再開を訴え、2006年11月、移植への理解を求める会(事務局・松山市、会員1400人))を結成し(2009年8月にNPO法人化)、署名活動をはじめ厚労省への陳情、講演会、シンポジウムの開催などさまざまな活動を進めてきました。 ご承知の通り、2008年12月には修復腎移植再開を切望する透析患者と移植者計7人が、日本移植学会幹部の先生方5人を相手取り、「虚偽の発言によって修復腎移植の妥当性(安全性と有効性)を否定し、厚労省による禁止を誘導、患者の生存権と選択権を侵害した」として松山地裁に提訴し、私たちの会がこの訴訟を全面的に支援してきました。結果は、一昨年10月、同地裁が原告の訴えを棄却、二審の高松高裁も今年1月、同様の判決を下し、原告の敗訴に終わりました。 しかしながら、もともと保険医療で認められていた修復腎移植が禁止となり、多くの透析患者が見殺しにされている現実は絶対に容認できないことであり、私たちは修復腎移植が一般医療として再開されるまで、粘り強く活動を続けていくつもりです。 そこで、今後、活動を進めていくに当たって、先生にぜひ教えていただきたいことがあり、この文書をしたためました。 一昨年2月25日、松山地裁での証人尋問に出廷された吉田先生は、原告側弁護人から修復腎移植に関する海外の事例を問われ、オーストラリアのデビット・ニコル医師が実施した45例の修復腎移植について「(ニコル医師の)論文は、我々もすぐに入手して、移植学会でも取り上げた」と証言されました。 しかし当時、日本移植学会副理事長だった大島伸一先生は、吉田先生とはまったく異なる発言をされています。大島先生に取材したノンフィクションライター・高橋幸春氏の著書「透析患者を救う! 修復腎移植」(彩流社)によると、ニコル医師の論文が掲載された第99回全米泌尿器科学会(2004年、サンフランシスコで開催)のハイライト集を、高橋氏が大島先生に提示したところ、先生は「(論文を)初めて見る」と答え、「不勉強と批判されても仕方ない。当時、そうした情報が上がってきたという記憶もない」と述べておられます(高橋氏のこの著書は裁判で証拠採用されました)。 また一昨年3月18日、松山地裁での本人尋問に出廷した大島先生は、高橋氏の著書について「事実関係に問題(事実とは異なる記述)があるかどうか」と原告側弁護士に問われると、「一言一句正確かと言われれば自信はないが、書いてある内容に、私としては、違和感はない」と答え、第99回全米泌尿器科学会のハイライト集については「知らなかった」と証言されました。 吉田先生も、大島先生も、法廷での証言に先立ち「真実のみを述べる」と宣誓した上で証言をされました。しかし、お二人の証言は食い違っています。どちらが真実なのでしょうか。お教えください。 吉田先生がニコル論文を「すぐに入手して、移植学会でも取り上げた」のであれば、その日時、出席者名、議事録を提示してくださるようお願いいたします。 またハイライト集に掲載のニコル論文を翻訳した堀江重郎先生に、当時、マスコミ数社の記者が取材を申し込んだところ、日本移植学会の関係者からコメントを控えてほしい旨の連絡が先生にあったことを告げられたと伝え聞いています。移植学会の側から、堀江先生になんらかの働きかけをされたのでしょうか。お教えください。 7年余りを費やした修復腎移植訴訟は原告の敗訴に終わりました。提訴直前には原告を予定していた2人が亡くなり、原告団に加わった仲間も、7人のうち4人が係争中に相次いで亡くなりました。全員、透析患者で「修復腎移植を受け、元気になって社会のお役に立ちたい」と強く望んでいました。 修復腎移植が禁止されてほぼ10年。この間に修復腎移植が再開されていたら、皆さんの多くが助かっていたはずです。そのことを思うと無念でなりません。仲間の遺志を受け継ぐためにも、移植を待ちわびている多くの患者の皆さんのためにも、私たちは運動の継続とともに、活動の詳細な記録を残しておく必要性を強く感じています。 以上、私どもの思いをご理解いただき、どうかご協力をよろしくお願いいたします。 なお、ご多忙中、まことに恐縮ですが、この文書到着後2週間以内にご回答をいただければ幸甚です。 敬具 吉田広報委員長の回答 NPO法人移植への理解を求める会 理事長 向田 陽二様 成28年11月21日 拝啓 向寒の候、ますますご清栄のことと慶び申し上げます。 さて、ご質問の件ですが、ニコルの論文に関しては松山地裁での証言が当時の記憶であります。その余の事については、回答する立場にないので回答を差し控えていただきたいと思います。どうぞご理解のほど宜しくお願いします。 敬具 吉田克法 米国での修復腎移植推進どう思うか高原氏 米国の臓器分配ネットワーク(UNOS)が修復腎移植の推進をスタートしたたなかで、今もか たくなに反対を続ける移植学会。高原史郎前理事長にその考えを聞きました。 高原前理事長への質問状 平成28年12月 15日. 大阪大学大学院医学系研究科泌尿器科 先端移植基盤医療学 教授 高原 史郎様 修復腎移植に関する質問について NPO法人移植への理解を求める会 理事長 向田 陽二 拝啓 医学の普及と発展のために、先生が日ごろ多大のご努力をされていることに対し、心から敬意を表します。 さて、突然このような文書をお送りする失礼をお許しいただきたいと思います。 私たちは慢性腎不全患者の救済に大きな期待が寄せられている修復腎移植の再開を訴え、2006年11月、移植への理解を求める会(事務局・松山市、会員1400人))を結成し(2009年8月にNPO法人化)、署名活動をはじめ、厚労省への陳情、講演会、シンポジウムの開催などさまざまな活動を進めてきました。 ご承知の通り、2008年12月には修復腎移植再開を切望する透析患者と移植者計7人が、日本移植学会幹部の先生方5人を相手取り、「虚偽の発言によって修復腎移植の妥当性(安全性と有効性)を否定し厚労省による禁止措置を導き、患者の生存権と選択権を侵害した」として松山地裁に提訴し、私たちの会がこの訴訟を全面的に支援してきました。結果は、一昨年10月、同地裁が原告の訴えを棄却、二審の高松高裁も今年1月、同様の判決を下し、原告の敗訴に終わりました。 しかしながら、もともと保険医療で認められていた修復腎移植が禁止となり、多くの透析患者が見殺しにされている現実は絶対に容認できないことであり、私たちは修復腎移植が一般医療として再開されるまで、粘り強い活動を続けていくつもりです。 そこで、今後、活動を進めていくに当たって、先生に次の3点について、お教えいただきたく、この文書をしたためました。ぜひご回答をいただければと思います。 質問1、米国では、全米臓器移植ネットワーク(UNOS)が修復腎移植を有力な医療と認め、今年4月から推進をスタートさせました。しかし、日本移植学会はいまだに、修復腎移植はドナーとレシピエント双方にリスクを与える恐れがあるなどとして反対しています。このことについて、ご見解をお聞きしたいと思います。 質問2、今年8月25日に開かれた先進医療を審議する厚労省の審査部会で、担当委員の一人から「ダビンチや内視鏡の登場により、腎がんは7センチくらいまで部分切除で取り出すことができるようになった。全摘の例は非常に限られており、先進医療の申請は意味がない」という趣旨の発言がありました。しかし、がんの部位や再発の可能性などを考えると、全摘が極端に少なくなるとは思えません。また「数が限られているから検討する意味がない」というのはおかしいと思います。なぜなら使えるものなら、1個でも無駄にすべきではないと思うからです。この委員の意見について、ご見解をお聞きしたいと思います。 質問3、患者が学会幹部の先生方を訴えた修復腎移植訴訟で、証人尋問に出廷された日本移植学会広報委員長の吉田克法先生は「ドナーの癌が持ち込まれる恐れが、たとえば0・1%でもいけないのか」との原告側弁護人の質問に対し、「移植の場合は、数字が非常に低くても駄目だと思う」と肯定する発言をされました。しかし、世界で100例以上行われている小径腎がんの修復腎移植では、がんが伝播した例は1例も確認されていません。また透析をずっと続けることのリスクの方が修復腎移植によるがん伝播のリスクよりはるかに大きいと私たちはと思います。この吉田先生の発言について、ご見解をお聞きしたいと思います。 7年余りを費やした修復腎移植訴訟では、提訴直前に原告を予定していた2人が亡くなり、原告団に加わった仲間も、7人のうち4人が係争中に相次いで亡くなりました。全員、透析患者で「修復腎移植を受け、元気になって社会のお役に立ちたい」と強く望んでいました。 修復腎移植が禁止されてほぼ10年。この間に修復腎移植が再開されていたら、皆さんの多くが助かっていたはずです。そのことを思うと無念でなりません。これら仲間の遺志を受け継ぐためにも、移植を待ちわびている多くの患者の皆さんのためにも、私たちは運動の継続とともに、活動の詳細な記録を残しておく必要性を感じています。 以上、私どもの思いをご理解いただき、ご協力をよろしくお願いいたします。 なお、ご多忙中、まことに恐縮ですが、この文書到着後2週間以内にご回答をいただければ幸甚です。 敬具 →回答なし
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by shufukujin-kaihou
| 2017-01-28 09:52
| NPO会報第23号(39号)
NPO移植への理解を求める会 会報第22号 先進医療、継続審議に 修復腎移植厚労省が審査部会開催 先進医療適用の可否を審議する厚生労働省の先進医療技術審査部会が8月25日、東京都港区の航空会館で開かれました。医療、法曹関係の委員16人が出席し、協議した結果、徳洲会が再申請した修復腎移植は、残念ながら承認には至らず、「継続審議」となりました。 修復腎移植の先進医療適用について審議が行われたのは2012年8月の専門家会議以来、4年ぶりです。今回の協議では4人の担当委員から「腹腔鏡やダビンチの導入により、腎がんは7センチくらいのものまで部分切除で対応できるようになった。全摘は極めて限られており、修復腎移植の申請は疑問」「ドナーへの腎全摘基準の説明があいまい。全摘を誘導する恐れがある」といった趣旨の否定的な意見が相次ぎました。 しかし、厚労省の担当者から「徳洲会は、委員の先生方の意見を踏まえ、内容を修正して再申請する強い意欲がある」と擁護する発言があり、かろうじて継続審議となったというのが実情です。 徳洲会では「継続審議となったことは非常に残念」としながらも、「移植を待つ患者さんのために、厚労省の関係部局の指導を仰ぎながら、もう一度、先進医療適用の申請をしたい」としています。 協議は「茶番」広く議論できる場を 厚労省の審査部会の協議を傍聴した感想を一言で言うと、結論ありきの「出来レース」であり、「茶番」と言えるものでした。担当委員は全員、移植の現場やこれまでの経緯を知らない門外漢で、学会の主張に合わせておけば間違いないと思っているのか、それとも学会に吹き込まれたのか、出てくる意見は学会の受け売りのようなものばかりでした。 したがって、私たちにとって納得のいかない意見ばかりです。「全摘の症例は極めて限られており、修復腎移植は疑問」という発言も、修復腎を否定するために学会が新たに唱え始めたことです。仮に今後、全摘の症例が減少していくとしても、まだまだ捨てられている腎臓は少なからずあるはず。移植を待つ患者さんの命を救うためにこれらを1個たりとも無駄にせず、役立てるべきです。委員らはその1個の重みをまったく分かっていないようです。 「全摘基準の説明があいまいで、ドナーに全摘を誘導する恐れがある」という意見も、私たちには言いがかりのように思えます。臨床の現場では全摘の基準は自ずとはっきりしているのではないでしょうか。ドナーへの全摘誘導も、第三者機関がチェックすれば起こり得ないと思います。 また協議の中で、海外の移植関係者の間で修復腎移植が絶賛され、アメリカでは全米臓器配分ネットワーク(UNOS)が修復腎の利用を始めたことなどは一切話題にされませんでした。委員らは修復腎移植を取り巻くこうした事情についても、理解が乏しいように思えました。 厚労省は先進医療の適用について公平な判断をするために、審査部会の委員の構成や人選を一から見直すべきではないでしょうか。委員には移植の臨床現場を知る医師や生命倫理学の専門家などを加え、幅広く議論ができる場にすべきだと思います。事実上、4人の担当委員の意見だけで判断が決まるような審査ではあまりに公平さを欠くように思います。 ただ審査部会を通じ、厚労省が修復腎移植に対して、前向きに考えていることが分かったことは、大きな収穫でした。今後の対応に期待したいと思います。(N) 評論 難波紘二・広島大学名誉教授 「腎全摘必要ない」と委員 厚労省の先進医療技術審査部会 では生体腎移植はどうなのか? 期待していた厚労省「先進医療技術審査部会」での「修復腎移植臨床研究」の審査が、移植学会関係者により「ダビンチの登場によりロボットで部分切除できるようなったから、小径腎がんの全摘は必要ない」という意見が強い中、厚労省の医系技官の異議申し立てにより、「却下するのではなく、継続審議にして、出された問題点をさらに改良すべき」という意見でかろうじて「継続審議」になったという。 この人たちは当初、「腎臓がんの腎臓を移植に用いたらがんが移るから、絶対に禁忌」だと、居丈高に主張した。それが元学説の提唱者ペンの学説が誤りであり、世界中ですでに100例以上行われた修復腎移植でドナーのがんが再発した例は1例もない。(逆に移植腎にレシピエント由来のがんが発生した例は何例かある。) すると今度は、「もともと小径腎がんは、部分切除すれば治癒するので、ドナーに過剰な負担をかける全摘術はやるべきでない」と主張し始めた。 ならば「健康なドナーから腎臓を摘出する生体腎移植」はもっとも非人道的行為ではないのか?日本の腎移植の80%が「生体腎移植」であるという、状況は誰に責任があるのか? 2006/11月に「修復腎移植」が公表されて以来、これを禁止するために彼らが口にする言説は完全に矛盾している。そうまでして誰の、どういう権益を守ろうとするのだろうか? いま、最後の追い込みにかかっている「第6章:国内の反応:学会と厚労省」用に用意しているゲーテのアフォリズムを紹介しよう。 「およそ完全に矛盾したことは、愚者にも賢者にも等しく神秘的に聞こえますからね。あなた、学芸の道は、昔も今もおんなじだ」(ゲーテ「ファウスト」第一部) 臨床研究の症例数も前回の倍近くになり、経過追跡も5年以上がかなりある。小川先生の英語論文もすでに2本が国際誌に発表されている。 修復腎移植が「TOD(治療的臓器提供)」という名の下に米UNOSの政策として採用され、ヨーロッパででも公認されている。まともに考えれば、承認するのが当然だろう。 恐らく猿田座長らは「合理的・理性的判断」ではなく、山本七平がいう「空気」をつくりだして「空気の支配」のもとに、「何となく却下」をねらっているのだと思われるが、「委員会決定という名の無責任決定=空気の支配」を許してはいけない。 臨床研究主体の徳州会にはまだ苦難の道が続くが、指摘されたマイナーな欠陥には誠実・柔軟に対応し、「却下」という最悪の事態に至ることだけはさけてほしいと願う。 そのうちにUNOSの「TOD」政策による「修復腎移植」の2016年データが公表されるはずだ。これが出れば、確実に流れは変わるだろう。(病理学・生命倫理学)
ニュース報道から 病気腎移植 継続審議に 先進医療指定 説明体制「曖昧」厚労省部会
【写真】病気腎移植の安全性や倫理的問題などを審議した厚生労働省の先進医療技術審査部会=25日午後、東京都港区 (2016年8月26日付、愛媛新聞)
廃棄の腎臓 透析患者へ活用ぜひ 塩崎厚労相、解禁すれば金字塔に 食品スーパーの片隅で、よくB品のバナナを売っている。医療関係者がって「痛んだ所を切り捨てる場合でも、食品としては医学的に妥当性がない」と邪魔して、廃棄を命じたらどうか。消費者や店は怒るだろう。こんな話が腎臓移植の世界では起きているのだ。 苦しい透析生活、巨額医療費も 年を取れば動脈硬化は進む。毛細血管のかたまりである腎臓がダメになる。また糖尿病が悪化しての糖尿病性腎症もある。多くの人は無関心で腎臓が背中に位置する事も知らない。機能が約15%に落ちるまで自覚症状がないので、だるさや頭痛、吐き気で気付いた時は手遅れだ。「他人事だよ」と思ってはならない。毎年3万人が新規に透析に入る。動脈硬化、高血圧、糖尿病を持つ人は立派な予備軍だ。 透析には二つ方法があるが大半は血液透析。2日に1回、4時間ほどクリニックのベッドに横になり、太い針で血を抜いて機械で浄化する。費用は年間500万円。全国で31万人が透析中。身障者手帳を持つので医療費1兆5千億円は税金で負担している。 透析機器は「尿」を作れない。水分の除去が苦手なので、患者は一日コップ数杯しか飲めない。果物や野菜はカリウムが多いのでほとんど口にできない。透析スケジュールに縛られるので、国内旅行さえ困難になる。 リスクは患者、自己決定に委ねよ 本来は腎臓を移植すれば良いのだが、国内では人の死は「心臓死」か「脳死」か、という論争に陥った挙句、第三者からの臓器提供は極めて少ない。がんなどで切除される腎臓を腎不全患者に利用する「修復腎(病気腎)移植」は日本移植学会と厚生労働省がストップをかけ、臨床研究以外は認められない。修復腎移植の解禁と保険適用を願う患者団体が、移植学会を訴えて裁判も起こした経緯がある。 腎臓は1個切除しても浄化能力は7割程度保てるので(腎臓がんなどになった場合は)片方の全摘が多いそうだ。こうして廃棄される腎臓を縫合して患者に移植すると、透析から解放される。拒絶反応を抑える薬は欠かせないが、水も飲め、不通に働けるようになる。小さながんは、個々人の免疫の型が違うので再発の例はないそうだ。仮にエイズや肝炎患者の腎臓なら、同じ病気を持つ透析患者に移植すればどうか。透析クリニックへの補償や転業促進は別途考えれば良い。患者団体によると、年間2000個の廃棄腎が確保できるという。 私には、移植医が廃棄腎の移植に反対する理由が分からない。リスクを負ってでも移植を受けたいという「自己決定」の原則をなぜ移植医が妨げるのか、その論拠を知りたい。。廃棄腎がダメなら、厚労省や移植学会が年2000個の腎臓を手配して欲しい。 疑り深い私には、1人年間500万円という医療費に医師、製薬や機器メーカー、天下り先を求める官僚がむらがっていないかと邪推してしまう。あるいは突出した実績の医師に「やっかみ」があるのかもしれない。 医療費は大幅減、2千人に幸せが 厚生労働大臣は愛媛1区選出の塩崎恭久氏だ。彼は現在の職務でどんな実績があるのだろうか? ここで参考になるのが井出正一厚生大臣(在任1994~95年)だ。旧長野2区で、さきがけから当選。井出大臣はトップダウンで病・医院の診療科目を拡大し、リハビリテーション科、リウマチ科の標ぼうを認めた。おかげでリウマチの場合、患者はすぐに専門医にアクセスが可能になり、感謝されている。 本年2月に共同通信が報じたのだが、米臓器移植ネットワーク(UONS)が「治療目的で摘出された病気の臓器(腎、肝)が、他の患者体内で機能する場合は、捨てずに移植医療に生かす」という趣旨で指針改正案をまとめ、4月から実施し始めたそうだ。 アメリカの考え方が日本に波及するのは時間の問題だ。もし塩崎厚労大臣が前倒しで廃棄腎の活用を解禁すれば、透析患者や家族から終生、感謝されるだろう。健康保険の財政負担も軽減する。透析クリニックの転業促進や補償は別途考えれば良い。 塩崎大臣が先取りして廃棄臓器の移植を解禁し、大きな実績に加えていただきたいと思う。 (客員論説委員・宮住冨士夫) (2016年7月25日付、愛媛経済レポート第2018号「よもやまジャーナル」)
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by shufukujin-kaihou
| 2016-09-26 15:46
| NPO会報第22号(38号)
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