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NPO法人会報第22号(通算38号)


 NPO移植への理解を求める会 会報第22号       

先進医療、継続審議に

修復腎移植厚労省が審査部会開催

先進医療適用の可否を審議する厚生労働省の先進医療技術審査部会が8月25日、東京都港区の航空会館で開かれました。医療、法曹関係の委員16人が出席し、協議した結果、徳洲会が再申請した修復腎移植は、残念ながら承認には至らず、「継続審議」となりました。

修復腎移植の先進医療適用について審議が行われたのは2012年8月の専門家会議以来、4年ぶりです。今回の協議では4人の担当委員から「腹腔鏡やダビンチの導入により、腎がんは7センチくらいのものまで部分切除で対応できるようになった。全摘は極めて限られており、修復腎移植の申請は疑問」「ドナーへの腎全摘基準の説明があいまい。全摘を誘導する恐れがある」といった趣旨の否定的な意見が相次ぎました。

しかし、厚労省の担当者から「徳洲会は、委員の先生方の意見を踏まえ、内容を修正して再申請する強い意欲がある」と擁護する発言があり、かろうじて継続審議となったというのが実情です。

徳洲会では「継続審議となったことは非常に残念」としながらも、「移植を待つ患者さんのために、厚労省の関係部局の指導を仰ぎながら、もう一度、先進医療適用の申請をしたい」としています。

協議は「茶番」広く議論できる

厚労省の審査部会の協議を傍聴した感想を一言で言うと、結論ありきの「出来レース」であり、「茶番」と言えるものでした。担当委員は全員、移植の現場やこれまでの経緯を知らない門外漢で、学会の主張に合わせておけば間違いないと思っているのか、それとも学会に吹き込まれたのか、出てくる意見は学会の受け売りのようなものばかりでした。

したがって、私たちにとって納得のいかない意見ばかりです。「全摘の症例は極めて限られており、修復腎移植は疑問」という発言も、修復腎を否定するために学会が新たに唱え始めたことです。仮に今後、全摘の症例が減少していくとしても、まだまだ捨てられている腎臓は少なからずあるはず。移植を待つ患者さんの命を救うためにこれらを1個たりとも無駄にせず、役立てるべきです。委員らはその1個の重みをまったく分かっていないようです。

「全摘基準の説明があいまいで、ドナーに全摘を誘導する恐れがある」という意見も、私たちには言いがかりのように思えます。臨床の現場では全摘の基準は自ずとはっきりしているのではないでしょうか。ドナーへの全摘誘導も、第三者機関がチェックすれば起こり得ないと思います。

また協議の中で、海外の移植関係者の間で修復腎移植が絶賛され、アメリカでは全米臓器配分ネットワーク(UNOS)が修復腎の利用を始めたことなどは一切話題にされませんでした。委員らは修復腎移植を取り巻くこうした事情についても、理解が乏しいように思えました。

厚労省は先進医療の適用について公平な判断をするために、審査部会の委員の構成や人選を一から見直すべきではないでしょうか。委員には移植の臨床現場を知る医師や生命倫理学の専門家などを加え、幅広く議論ができる場にすべきだと思います。事実上、4人の担当委員の意見だけで判断が決まるような審査ではあまりに公平さを欠くように思います。

ただ審査部会を通じ、厚労省が修復腎移植に対して、前向きに考えていることが分かったことは、大きな収穫でした。今後の対応に期待したいと思います。(N)

 評論 難波紘二・広島大学名誉教授                         

「腎全摘必要ない」と委員

厚労省の先進医療技術審査部会

では生体腎移植はどうなのか?

期待していた厚労省「先進医療技術審査部会」での「修復腎移植臨床研究」の審査が、移植学会関係者により「ダビンチの登場によりロボットで部分切除できるようなったから、小径腎がんの全摘は必要ない」という意見が強い中、厚労省の医系技官の異議申し立てにより、「却下するのではなく、継続審議にして、出された問題点をさらに改良すべき」という意見でかろうじて「継続審議」になったという。

 この人たちは当初、「腎臓がんの腎臓を移植に用いたらがんが移るから、絶対に禁忌」だと、居丈高に主張した。それが元学説の提唱者ペンの学説が誤りであり、世界中ですでに100例以上行われた修復腎移植でドナーのがんが再発した例は1例もない。(逆に移植腎にレシピエント由来のがんが発生した例は何例かある。)

 すると今度は、「もともと小径腎がんは、部分切除すれば治癒するので、ドナーに過剰な負担をかける全摘術はやるべきでない」と主張し始めた。

 ならば「健康なドナーから腎臓を摘出する生体腎移植」はもっとも非人道的行為ではないのか?日本の腎移植の80%が「生体腎移植」であるという、状況は誰に責任があるのか?

 2006/11月に「修復腎移植」が公表されて以来、これを禁止するために彼らが口にする言説は完全に矛盾している。そうまでして誰の、どういう権益を守ろうとするのだろうか?

 いま、最後の追い込みにかかっている「第6章:国内の反応:学会と厚労省」用に用意しているゲーテのアフォリズムを紹介しよう。

「およそ完全に矛盾したことは、愚者にも賢者にも等しく神秘的に聞こえますからね。あなた、学芸の道は、昔も今もおんなじだ」(ゲーテ「ファウスト」第一部)

 臨床研究の症例数も前回の倍近くになり、経過追跡も5年以上がかなりある。小川先生の英語論文もすでに2本が国際誌に発表されている。

 修復腎移植が「TOD(治療的臓器提供)」という名の下に米UNOSの政策として採用され、ヨーロッパででも公認されている。まともに考えれば、承認するのが当然だろう。

 恐らく猿田座長らは「合理的・理性的判断」ではなく、山本七平がいう「空気」をつくりだして「空気の支配」のもとに、「何となく却下」をねらっているのだと思われるが、「委員会決定という名の無責任決定=空気の支配」を許してはいけない。

 臨床研究主体の徳州会にはまだ苦難の道が続くが、指摘されたマイナーな欠陥には誠実・柔軟に対応し、「却下」という最悪の事態に至ることだけはさけてほしいと願う。

 そのうちにUNOSの「TOD」政策による「修復腎移植」の2016年データが公表されるはずだ。これが出れば、確実に流れは変わるだろう。(病理学・生命倫理学)


 ニュース報道から                           

病気腎移植 継続審議に 先進医療指定 説明体制「曖昧」厚労省部会

 宇和島徳洲会病院(宇和島市住吉町2丁目)が臨床研究を進めている直径4センチ以下の小径腎がんを用いた「病気腎(修復腎)移植」について、厚生労働省の先進医療技術審査部会(座長・猿田享男慶応大名誉教授)は25日、費用の一部が保険適用となる先進医療指定の可否に関する審議を始めた。腎摘出に伴うリスクや治療法選択に関するドナー(提供者)への説明体制に「曖昧な点が多い」などとして申請内容の修正を求め、継続審議となった。
 部会には医療や法曹分野の16人が出席。事前評価した部会メンバーは、小径腎がんの治療では部分切除が推奨されている点を強調し「ドナーへの説明文書に十分な記載がなく、腎摘へと誘導されかねない」「腎摘が妥当な場合の医学的条件を明確にする必要がある」などと指摘した。
 猿田座長は「日本中で移植を待っている人がいるのは分かる。非常に大切な問題で、早急に対応してほしい」と話し、指摘した点の検討を病院側に求めた。
 傍聴した徳洲会担当者は「今後の方針を検討したい」とコメント。修復腎移植を推進するNPO法人「移植への理解を求める会」の向田陽二理事長(58)は「全摘が少ないと言うが、実際に捨てられている腎臓はある。命がかかっている患者のことも考え、前向きな言葉がほしかった」と述べた。 

【写真】病気腎移植の安全性や倫理的問題などを審議した厚生労働省の先進医療技術審査部会=25日午後、東京都港区               (2016年8月26日付、愛媛新聞)


 コラムから     
                                                                                      

廃棄の腎臓 透析患者へ活用ぜひ

塩崎厚労相、解禁すれば金字塔に

 食品スーパーの片隅で、よくB品のバナナを売っている。医療関係者がって「痛んだ所を切り捨てる場合でも、食品としては医学的に妥当性がない」と邪魔して、廃棄を命じたらどうか。消費者や店は怒るだろう。こんな話が腎臓移植の世界では起きているのだ。

苦しい透析生活、巨額医療費も

 年を取れば動脈硬化は進む。毛細血管のかたまりである腎臓がダメになる。また糖尿病が悪化しての糖尿病性腎症もある。多くの人は無関心で腎臓が背中に位置する事も知らない。機能が約15%に落ちるまで自覚症状がないので、だるさや頭痛、吐き気で気付いた時は手遅れだ。「他人事だよ」と思ってはならない。毎年3万人が新規に透析に入る。動脈硬化、高血圧、糖尿病を持つ人は立派な予備軍だ。

 透析には二つ方法があるが大半は血液透析。2日に1回、4時間ほどクリニックのベッドに横になり、太い針で血を抜いて機械で浄化する。費用は年間500万円。全国で31万人が透析中。身障者手帳を持つので医療費1兆5千億円は税金で負担している。

 透析機器は「尿」を作れない。水分の除去が苦手なので、患者は一日コップ数杯しか飲めない。果物や野菜はカリウムが多いのでほとんど口にできない。透析スケジュールに縛られるので、国内旅行さえ困難になる。

リスクは患者、自己決定に委ねよ

 本来は腎臓を移植すれば良いのだが、国内では人の死は「心臓死」か「脳死」か、という論争に陥った挙句、第三者からの臓器提供は極めて少ない。がんなどで切除される腎臓を腎不全患者に利用する「修復腎(病気腎)移植」は日本移植学会と厚生労働省がストップをかけ、臨床研究以外は認められない。修復腎移植の解禁と保険適用を願う患者団体が、移植学会を訴えて裁判も起こした経緯がある。

 腎臓は1個切除しても浄化能力は7割程度保てるので(腎臓がんなどになった場合は)片方の全摘が多いそうだ。こうして廃棄される腎臓を縫合して患者に移植すると、透析から解放される。拒絶反応を抑える薬は欠かせないが、水も飲め、不通に働けるようになる。小さながんは、個々人の免疫の型が違うので再発の例はないそうだ。仮にエイズや肝炎患者の腎臓なら、同じ病気を持つ透析患者に移植すればどうか。透析クリニックへの補償や転業促進は別途考えれば良い。患者団体によると、年間2000個の廃棄腎が確保できるという。

私には、移植医が廃棄腎の移植に反対する理由が分からない。リスクを負ってでも移植を受けたいという「自己決定」の原則をなぜ移植医が妨げるのか、その論拠を知りたい。。廃棄腎がダメなら、厚労省や移植学会が年2000個の腎臓を手配して欲しい。

疑り深い私には、1人年間500万円という医療費に医師、製薬や機器メーカー、天下り先を求める官僚がむらがっていないかと邪推してしまう。あるいは突出した実績の医師に「やっかみ」があるのかもしれない。 

医療費は大幅減、2千人に幸せが

厚生労働大臣は愛媛1区選出の塩崎恭久氏だ。彼は現在の職務でどんな実績があるのだろうか?

ここで参考になるのが井出正一厚生大臣(在任1994~95年)だ。旧長野2区で、さきがけから当選。井出大臣はトップダウンで病・医院の診療科目を拡大し、リハビリテーション科、リウマチ科の標ぼうを認めた。おかげでリウマチの場合、患者はすぐに専門医にアクセスが可能になり、感謝されている。

本年2月に共同通信が報じたのだが、米臓器移植ネットワーク(UONS)が「治療目的で摘出された病気の臓器(腎、肝)が、他の患者体内で機能する場合は、捨てずに移植医療に生かす」という趣旨で指針改正案をまとめ、4月から実施し始めたそうだ。

アメリカの考え方が日本に波及するのは時間の問題だ。もし塩崎厚労大臣が前倒しで廃棄腎の活用を解禁すれば、透析患者や家族から終生、感謝されるだろう。健康保険の財政負担も軽減する。透析クリニックの転業促進や補償は別途考えれば良い。

塩崎大臣が先取りして廃棄臓器の移植を解禁し、大きな実績に加えていただきたいと思う。

                           (客員論説委員・宮住冨士夫)

(2016年7月25日付、愛媛経済レポート第2018号「よもやまジャーナル」)

 

報第22号

(通算38号)

2016年

9月26日(月)発行

発行者 NPO法人移植への理解を求める会  理事長 向田 陽二

798-4101愛南町御荘菊川2290    電話085-74-0512

編集者                  副理事長 野村 正良

       〒791-8006松山市安城寺町1746-8    電話089-978-5434

発行所                  事務局長 河野 和博

       〒790-0925松山市鷹子町9282     電話089-970-3943



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by shufukujin-kaihou | 2016-09-26 15:46 | NPO会報第22号(38号)