NPO会報第29号(第45号)

      NPO移植への理解を求める会 会報第29号 


修復腎移植が先進医療に


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厚労省会議 条件付き承認、一部保険適用へ

徳洲会グループによる修復腎移植の先進医療申請が厚労省の専門家会議で5日、ようやく認められました。レシピエント(移植者)の選定委員に関係学会の推薦者を入れるという条件付きですが、これは問題なくクリアされる見通しです。
 最初の申請から7年、2007年にこの移植が禁止されてから11年。長い時間がかかりましたが、一般医療として再開されるための欠かせぬ一歩であり、皆さんと素直に喜び合いたいと思います。これも、辛抱強くご努力を続けてこられた徳洲会グループをはじめ、ご支援をいただいてきた多くの団体、個人の皆さんのおかげであり、あらためて心より感謝を申し上げたいと思います。

厚労省によると、徳洲会グループの宇和島病院と東京西病院で、9年間の予定で臨床研究を計画。4年間で42例を実施し、5年間で安全性や有効性を確認するとしています。徳洲会では他の病院の参画も呼び掛けたい意向です。なお、手術費用などを除く医療費は保険適用されるようになります。今後は移植を待つ患者さんが一人でも多く一日も早く救われるよう、一般医療としての早期再開が望まれます。

それにつけても、これまで11年余り、移植医療を先頭に立って進めるべき日本移植学会が、一度も修復腎移植と真剣に向き合うことなく、やみくもに反対し、移植を望む多くの患者を踏み付けにしてきた理不尽な態度は、忘れるわけにはいきません。深く反省し、二度とこのようなことがないよう、患者とともに歩む医療を進めていただきたいと思います。(写真:修復腎移植の先進医療申請を審議する専門家会議=7月5日・厚労省)






6月・松山で第10回総会開く



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NPO法人移植への理解を求める会の2018年度(第10回)総会と記念講演会が6月10日松山市山越町の愛媛県男女共同参画センター視聴覚室で開かれました。

総会は午前11時から開会。役員と正会員計15人が参加。昨年度の事業報告や新年度の行事計画、予算などを話し合いました。徳洲会グループによる修復腎移植の申請が昨年10月、厚労省の審査部会で条件付きながらら承認されたことから、当会では、今後とも先進医療としての研究を注視していくことや、理解を広げる活動を引き続き進めていくことなどを決めました。

役員改選では、向田陽二理事長以下理事14人と監査委員2人全員の再任を了承しました。



「愛媛大学の移植への取り組み」テーマに 


記念講演会 宮内勇貴先生がご講演

講演会は昨年に続き、えひめ移植者の会と合同で開催。講師の宮内勇貴先生(愛媛大学医学部附属病院泌尿器科講師、移植医)に「愛媛大学の移植への取り組み」のテーマで、最新の一般的な移植の話題を含めてお話しいただきました。

東温市志津川の同病院では県内の移植医療の提供体制の充実を目指し、この4月から「臓器・組織移植センター」の運営を始めており、タイムリーな講演会になりました。

(写真は6月10日、愛媛県男女共同参画センターで開かれた記念講演会) 

 (4面に講演要旨

  

                                                                                               □ 講演要旨  

                                    

愛媛大学の移植への取り組み


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  医学部附属病院泌尿器科講師 宮内勇貴先生


きょうの講演では、まず移植に関する一般的なお話をさせていただき、そのあと愛媛大学の移植への取り組みをご紹介したいと思います。

移植と透析の現状はどうなのか。データからみると、2016年末時点では、透析患者さんは329609人、約33万人の方が透析をしています。前年と比べて4、623人増えており、増え方は少しずつ鈍ってきています。

腎不全対策の進歩によって透析まで進むことが少なくなってきたことが、一番の原因と言われています。半面、亡くなる透析患者さんが減ってきたということもあります。

透析患者さんは100万人当たり2、596人。国民380人に1人が透析をしているというのが現状です。


▼透析導入の原因疾患、1位は糖尿病

透析導入の原因疾患は、これまで慢性糸球体腎炎、いわゆる慢性腎炎がトップでしたが、現在は糖尿病が1位、次が慢性腎炎、続いて腎硬化症となっています。

注目すべきは3位の腎硬化症です。痛風とか、高血圧とか、全身の血管が動脈硬化を起こし腎臓の動脈も硬化することによって起きてくる病気です。

すなわち、1位の糖尿病と3位の腎硬化症は、どちらも腎臓そのものの病気ではなく、全身の病気で、メタボリックシンドロームとか、生活習慣病が腎臓を悪くしているというのが現状です。なので、腎臓そのものの治療だけでなく、生活習慣病の改善がこれからの腎臓疾患の予防に大事だということが明らかになっています。


▼夫婦間の移植が最多、全体の38%

日本移植学会がまとめた「2016臓器移植ファクトブック」によると、透析の97%は血液透析、3%が腹膜透析です。移植は血液透析の0・5%と少なく、献腎移植は増えません。

ドナーのリスクについては、一般的には「大丈夫ですよ」という話をしています。移植直後には、残った腎臓の働きが70%まで増大します。腎臓の片方がなくなった瞬間から、残った腎臓がフルに働き出すので、まず問題はないと説明しています。

日本移植学会のガイドラインでは、ドナーの年齢は80歳以下となっていますが、愛媛大学では80歳以上の提供者が6,7人います。2002年の時点では、レシピエントのうち、3分の2の方が親から腎臓の提供を受けていますが、現在では夫婦間の移植が一番多く、全体の38%を占めています。

また以前の移植ではなかったことですが、今は透析を始める前に移植をする、先行的移植が進められています。これまでは透析をしてから移植をするのが当たり前の流れでしたが、今は透析をしないで、早めに移植をするようになっています。

腎不全になった患者さんには「透析をしますか、移植をしますか」ということで、話をしています。先行的移植はだんだん増えていて、2010年は2割弱でしたが、2016年のデータでは3割を超えています。


▼メリット多い透析前の先行的移植

先行的移植のメリットは、患者の生存率、移植腎の生着率が優れていることです。逆に、透析期間が長いほど成績は悪くなっています。透析期間が短いほど成績がよくて、先行的移植が最も良いという結果が出ています。

先行的移植をした患者さんと、そうでない患者さんについて、動脈硬化の有無を調べると、前者は動脈硬化が1例もなく、後者は半分の人に動脈硬化がありました。

透析は血圧の変動も激しいし、心臓への影響も大きい。しかも、透析でいろんな物質(老廃物)が全部抜けるわけではないので、動脈硬化がどんどん進んでしまいます。

 動脈硬化がある血管に腎臓を植えるのは、非常に難しい。なので、そうした状態で腎移植をするのはいろんなリスクを伴います。動脈硬化がないのも、先行的移植のメリットの一つだと思います。

 透析生活が長くなってくると、おしっこが出なくなってきます。そうなると、膀胱も小さく固くなってしまうので、そのトラブルも大きい。先行的移植の場合は、おしっこが出ている状態が続いているので、膀胱が柔らかい。だから手術もやりやすく、移植後も、普通におしっこが出て、逆流することも少ない。

 特に子供の場合は、先行的移植だと、身長の伸び方がいいと言われています。やはり移植すれば、骨の代謝もよくなるので、子供に与えるメリッは大きく、先行的移植が優先されるべきだろうと思います。さらに、移植後の拒絶反応が起きるケースも非常に少ないように思います。


▼移植センター設置、スタッフ充実へ

一般的なお話はこのくらいにして、この後は愛媛大学のお話をさせていただきます。

 愛媛大学附属病院には、臓器・組織移植センターができました。センターとしたのは、そこにいろいろな業務を集約することができるメリットがあるわけです。センター長は生体肝移植の高田泰次教授です。あとは、われわれ移植に関わる医師が参加する形になっています。まだ始まったばかりなので、特に何かをしているわけではありません。

 腎移植部門では、泌尿器科と腎臓内科の先生らに一生懸命やっていただいていて、特に都会で腎移植を勉強されてきた先生方との連携がよくなっています。

 センターのもう一つの狙いは、移植コーディネーターや専門スタッフの方々を充実させることです。私も、腎移植した方だけを診ているのではなくて、泌尿器科全般の患者さんを診ています。そこで、いつも申し訳ないなと思っているのは、患者さん一人当たりの診療時間が短いことです。私が以前に勤務していた東京女子医大でも一人当たりの診療時間は短かったけれど、移植コーディネーターと取り巻きがしっかりしていて、診療の後、患者さんがコーディネーターとお話をして帰るということができていました。いろんなことを聞いてもらったり、相談に乗ってもらったりもしていました。

コーディネーターからフィードバックしてもらって、私たちの方で対応することもありました。専属のスタッフがいると、医療が滞りなく進めることができるようになると思います。今後、移植の症例を増やしていくうえでも、足りないところをスタッフの方にいろいろカバーしていただけるようになればいいかなと思っています。

 あとは腎移植や肝移植では、お互いに何をやっているのか分からないので、情報を共有できたらいいかなと思っています。


 ▼高齢者が目立つ愛媛大学の腎移植

 愛媛大学での腎移植は、今、衣山クリニックにおられる大岡啓二先生がおられたころ、多く行われていましたが、先生がおられなくなってから激減し、年に1、2例と落ち込んでいました。私が2011年に、帰ってきてからは腎移植を増やしてきています。

年に15例実施した年もあるけど、一般泌尿器科の手術をするなかに、腎移植の枠を入れているので、今は月1例くらいのペースにしようかなと思っています。

 移植の成績は10年生存率が9割、10年生着率が8割というところです。大ざっぱに言って、愛媛大学附属病院では条件の悪い患者さんが多いので、なかなか苦労しています。

 血液型不適合の移植が多く、2回目移植の方も1割くらいいます。レシピエントの年齢は全国が45・7歳に対して、うちは53歳と高く、60歳以上の高齢者の割合も全国の2割に対して、うちは3割と多い。ドナーの平均年齢も5歳くらい高い。80歳以上のドナーは全国では0・4%に対して、うちは11%に上っています。70歳以上のドナーも非常に多いです。配偶者間の移植は全国が三十数%ですが、うちは多く、半分を占めています。ドナーが高齢の場合は、やはり成績が少し落ちます。


大学公費で保険適用外治療も実施

ドナーの腎臓は、動脈が短い右側のものを取るのはすごく難しい。うちはその右腎を取るケースが4分の1ある。全国では1割弱。ドナーの右側の腎臓の機能が悪かったら右側を取るようにしている。あまり差がなければ左を取るということを、厳密にやっています。先行的移植は4割を占めています。

大学ではドナーとレシピエントの相性をよくするために、免疫抑止剤で、もとは抗がん剤のリツキサンを投与するなどの研究もしています。

また大学ならではの話ですが、基準外医療費というのがあります。保険適用外の治療を大学の公費で行うというやり方で、適用外治療なので、患者さんから自費でお金を払っていただくか、大学が支払うしか方法がない。さすがに患者さんに支払っていただくというのは大変なので、大学で支払うということになっています。 


質 疑

質問  腎臓は元気だけど、他の病気で亡くなる人(移植者)が増えているということですが、その腎臓を他の人にもう一度使うということはできないのでしょうかー。

宮内先生 亡くなられた移植患者さんから、別の人に移植する例は日本ではないけれど、海外では報告例があります。できなくはないと思うけど、相当難しいと思います。

亡くなる人の場合、死因が二分される。一つは悪性腫瘍。その人には、全身にがんが満ちているので、使えません。もう一つは心臓死や、脳血管死。これらは可能かもしれません。

質問 ダヴィンチ(医療支援ロボット)で腎臓のがんが部分切除で取りきれるようになったと聞いているので、修復腎移植に使える腎臓は限りなく少なくなっているのではないでしょうかー。

宮内先生 ダヴィンチがおととしから保険適用になって、愛媛大学では既に30例から40例、腎臓のがんを部分切除しています。かつては、全摘出していたのを、今はことごとく部分切除でやっています。基本的に7センチ以下のがんは、ほぼ部分切除でいけます。

 なので、その範疇を超えるもの、ダヴィンチでも部分切除ができないものは捨てるしかない。移植には使えないと思っています。したがって、修復腎移植の対象としては無理だと思います。修復腎移植に使える腎がんは、ほぼ部分切除でいける。修復腎移植に使える腎がんはもうほぼないと言っていいと思います。そのくらいダヴィンチは全摘出のケースを激減させています。

私の個人的な考えを言うと、腎提供の意思があって、ドナーになっている方に腎がんが見つかった場合は、それを摘出して移植に使っていいんじゃないかな。その後押しをしてもらえたら、やりやすいと思います。

質問 ダヴィンチはどの程度使われているのですか。普及状況はー。

宮内先生 愛媛県内では愛媛大学、四国がんセンター、県立中央病院と市立宇和島病院の四つの病院で使われています。どこでも部分切除はやっています。 

宮内先生略歴 1972(昭和47)年3月、松山市生まれ。松山東高、愛媛大学医学部医学科卒。同学部附属病院、松山市民病院、市立宇和島病院、市立大洲病院、東京女子医科大学泌尿器科勤務などを経て、2011(平成23)年10月、愛媛大学医学部付属病院泌尿器科助教及び講師、現在に至る。医学博士。

日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本臨床腎移植学会認定医、日本移植学会認定医、日本透析医学会専門医・指導医、日本泌尿器内視鏡学会泌尿器腹腔鏡技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医(泌尿器腹腔鏡)、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。

医学博士論文は「腎癌に対する加熱による腫瘍縮小効果の検討」。

著書に「腎移植におけるサイトメガロウイルス感染症対策(今日の移植)」「ABO血液型不適合移植の治療法と管理について(最新透析医療 先端技術との融合)」など

高校時代からラグビーに親しみ、少し前まで学生のOB戦などで試合にも出場。




NHKが修復腎移植特番第2弾


「悪魔の医師か赤ひげか」 7月、Eテレで放映


万波先生らが取り組んでこられた修復腎移植の問題を検証する特別番組が3月28日夜、NHK総合テレビで「ノーナレ『悪魔の医師”か“赤ひげ”』」のタイトルで全国放送され、好評を博しましたが、これに続き、7月7日午後11時から、NHKETVでノーナレの拡大版として、1時間の特集番組が全国放送されました。今回も修復腎移植の12年間の軌跡をたどる内容で、アメリカの事情なども加え、前回より詳しい内容。再び評判を呼びました。

番組では、修復腎移植反対の先頭に立ってきた当時の日本移植学会副理事長、大島伸一先生が「この12年間は何だったんだろう」と「反省の弁」。

一方、生命倫理学の粟屋剛先生は「患者の意思を尊重し、修復腎移植は禁止すべきではない」と指摘。病理学の難波紘二先生も「世界の常識は日本の非常識」と、終始、修復腎移植に反対してきた学会を批判しました。万波先生が文句なしに赤ひげ先生であることを証明するのに十分な番組でした。意欲的なこの番組を制作した池座雅之ディレクターに敬意を表したいと思います。


報第29号

(通算45号)2018年

7月30日(月)発行

発行者 NPO法人移植への理解を求める会  理事長 向田 陽二

798-4101愛南町御荘菊川2290    電話085-74-0512

編集者                  副理事長 野村 正良

       〒791-8006松山市安城寺町1746-8    電話089-978-5434

発行所                  事務局長 河野 和博

       〒790-0925松山市鷹子町9282     電話089-970-3943



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by shufukujin-kaihou | 2018-08-08 14:23 | NPO会報第29号(45号)
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