NPO法人会報第14号(通算30号)

NPO法人移植への理解を求める会 会報第14号

修復腎訴訟 証人尋問終わる

7月1日最終弁論、秋にも判決


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修復腎移植訴訟の口頭弁論での証人尋問が、松山地裁で2月25日と3月18日に実施され、原告、被告計6人の尋問が、予定通りすべて終わりました。この後、7月1日に最終の口頭弁論が開かれ、結審の予定です。早ければこの秋にも判決が出るとみられています。

被告側の証人は、吉田克法日本移植学会理事(奈良県立医科大学准教授)と大島伸一同学会元副理事長(国立長寿医療センター総長)が出廷しました。2人の発言から、修復腎移植は何が何でも認めないという姿勢がよく分かりました。

また、この問題が表面化した2006年11月以降、学会は修復腎移植の「妥当性」などについて何の検討もしてこなかったことが証明されました。修復腎移植の再開を望む患者の切実な気持ちなどまったく頭になく、他人事のように無視し続けていることは、医師の態度として決して許されないことです。


 証人尋問から                           

証人尋問の発言の中から、その一部を紹介します。

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証人尋問を終え記者会見を行う難波、光畑、野村証人と弁護団



癌持ち込み0.1%でも駄目
 吉田 克法証人(日本移植学会理事)

柴田 崇弁護士(被告ら代理人) 病腎移植について、2006年~2007年当時は、どのような評価がなされていたか。

吉田証人 2006年に起きた臓器売買事件を機に、病腎移植が表面化した。移植学会と関係の腎臓学会、透析学会、臨床腎移植学会の4学会を含めた全5学会関係者は、その治療法について非常に驚いた。それで2007年に5学会は「病腎移植医は現時点では認められない医療である」とする声明文を出した。ただ、それには未来永劫、禁止されるような治療法とは書いていない。将来的に安全で、患者さんにとって有用であるということが確認された時点では、一般的な治療法として認められると思う。

 しかし、2006年~2007年の時期は、明らかに安全であるとか、患者さんにとって有益である、あるいは腎臓を提供された方に有益であるということが確認できていなかった。したがって、関連5学会は、その時点では病腎移植は認められないという声明文を出した。

○現在では安全性、有益性が確認されているか。

●当時も、現時点でも、癌の症例を含めて、患者さんにとって有益である、安全である、あるいは腎臓を提供された方にとって有益である、安全であるということは確認されていない。

○移植ができる患者を一人でも多くしていくという移植医療の視点で考えると、何が大切か。

●移植医療は非常にすばらしい治療法だが、問題は提供者が少ないことだ。そこで一番大事なことは、献腎移植を増やすことだ。学会はそのことに真剣に取り組んでいる。

○腎移植を増やすに当たって、気をつけなければならないことは。

●提供者の意思と家族の考えを最も大事にしなくてはいけない。提供者の安全性、家族の不安感をなくすのが一番大事だと思う。

○移植において、悪性腫瘍のある患者を提供者とすることについて、どう考えるか。

●病腎移植が行われていた時期、スタンダードな考えは、一部治癒した悪性腫瘍は別として、悪性腫瘍を持っている患者(担癌患者)さんからの移植、特に生体腎移植は禁忌というものだ。肝臓移植なども同様だ。現在も、その考えは変わっていない。、

○他人の癌は転移しにくく、病腎移植は安全であるという見解もあるようだが、この見解について、どのように考えているか。

●腎臓の癌は、血行性転移が多い癌の一つだ。したがって、腎臓の癌を摘出した後でも、われわれの経験上、あるいは論文でも、10年後、20年後に癌が再発したという報告も多数ある。腎臓の癌、特に今回問題となっている尿路系の腎臓の癌は結構、転移が多いので、転移、播種のないように手術するのが原則だ。

癌細胞は免疫力が弱ると発育してくる。したがって、他人の癌細胞であろうが、自分の癌細胞であろうが、免疫力が非常に弱い患者さんの場合、特に移植手術後、免疫抑制剤を大量に投与する患者さんは、抵抗力、免疫力が弱くなり、癌細胞が発育すると、われわれは教わっている。教科書にもそう書いてある。したがって、他人の癌は移りにくいという報告は見たことがない。

宮沢 潤弁護士(被告ら代理人) ドナーの癌の持ち込みの可能性が、仮に1%でもあった場合、移植医療として移植学会は推進、推奨することはできるのか。

吉田証人 それはできない。 

○危険性があるからということか。

●そうだ。

光成 卓明弁護士(原告ら代理人)ドナーの癌が持ち込まれる恐れが1%でも許容できないと言う話は、ずいぶん高すぎる数字だと思うが、たとえば0・1%でもいけないのか。

吉田証人 移植の場合は、数字が非常に低くても駄目だと思う。

○(病腎移植について)各病院での調査が終わってから現在に至るまで、学会に病腎移植についての研究グループ、あるいは研究チームは作られているか。

●移植学会の特別委員会で、検討している。しかし、病腎移植だけを対象とした委員会はない。そういう会合も行っていない。


生きる道は移植しかない 藤村 和義証人(透析患者)

薦田 伸夫弁護士(原告ら代理人) 

あなたは透析を始めて、どれぐらいになるか。

藤村証人 7年と11カ月になる。

○透析が長くなるにつれて、何か体に異状は出ていないか。

●おととしから、足の動脈硬化で血管が詰まって石灰化し、足の動脈を広げる手術を受けている。過去、5回(手術を)している。

○石灰化について、(主治医に)何か言われたことはあるか。

●CTの検査で腹部大動脈、胸部大動脈、両脚の辺りの動脈に石灰が沈着しているようで、石灰化が始まっていると言われた。

○石灰化が進むと、どうなるのか。

●心臓まで石灰化し、心筋梗塞で死亡するそうだ。

〇透析生活を続けてきて、体調が悪化してきているということだが、今の状態から抜け出すために,希望していることは。

●6年前、移植をしないと助からないと思い、(日本臓器移植ネットワークに)移植の希望登録をしようと考えた.。しかし、1万2000人が待っていて、待ち時間が長いと聞いて、修復腎移植の方が(実現の)確率が高いと思い、こちらに(徳洲会宇和島病病院で)希望登録をした。

○移植学会の人たちが(修復腎移植に反対して)いろいろ発言している。あなたはどう感じたか。

●私の生きる道は移植しかないので、移植学会の方々が反対しているのは、理不尽だと思った。なぜ、駄目なのか、理由を知りたい。


患者無視の学会は理不尽 野村 正良証人(修復腎移植者)

岡林 義幸弁護士(原告ら代理人) 腹膜透析を始めて2年半ぐらいたったときに死体腎(献腎)移植を受け、手術は成功したということだが、透析から解放されたときの気持ちは。

野村証人 透析期間中は一日中頭が痛くて、吐き気がして、階段を10段くらい上がっても、心臓がばくばくするような、そういう生活を送っていた。ところが、移植を受けた途端、元の元気な体に戻った。全然出なかったおしっこも出るようになり、それは快感だった。

○仕事にはどんな変化があったか。

●元気なころとほとんど変わらない仕事ができるようになった。スポーツもできるし、食事制限もなくなった。

○「命よみがえる」(愛媛新聞社、1990年)という本を出されているが、この本を書いた目的は。

●移植を受けて元気になり、移植とはこんなにすばらしいものかという実感を持ったので、ドナーが増えて透析をされている人が一人でも多く移植ができ、自分と同じように元気になっていただきたいという願いを込めた。これは使命感を持って書いた。

○「愛媛腎移植者友の会」(現えひめ移植者の会)という団体を設立されたが、その目的は。

●移植を進めるために、移植を受けた人たちが、もっと声を上げていこうというのが目的。実は市立宇和島病院の名誉院長(当時院長)、近藤先生から「患者会は組織できないのか」という話があって、移植のすばらしさを知ってもらうために、患者同士でそういう話ができる会にしようと立ち上げた。

○移植を受けて健康的な生活ができるようになったが、その後、腎炎が再発したとのこと。そのときの気持ちは。

●移植腎は半永久的に持つものではないので、「とうとう来たか」という気持ちだった。今の日本の状況では、献腎移植はほとんど望めないので、またつらい透析に戻り、何年生きられるか分からないけれど、とにかく頑張ろうという気持ちだった。

○透析を覚悟したけど、奥さんの臓器提供で2度目の移植を受けることになったとのことだが、その結果は。

●残念ながら、血液型不適合ということもあって、うまくいかず1週間で駄目になった。

○その時の気持ちは。

●家内が本当にかわいそうで、腎臓をもらうのではなかったという気持ちになった。生体腎移植がいかに大変かということが、よく分かった。献腎を増やして、多くの人が移植を受けられるようにしなければいけないと思った。

○奥さんからの腎臓提供による移植が失敗した後、万波先生から(修復腎)移植の話があったということだが。

●家内にもらった腎臓を取り出して2週間くらいたったころ、先生から話があった。「ネフローゼの患者さんが、いくら化学療法をやってもうまくいかないので、ご本人は『親族から腎臓をもらって移植を受けるので、腎臓を取り出してくれ』と言っている。その腎臓を移植する方法がある。たんぱくがぼろぼろ出ていて、成功率は五分五分だが、駄目もとでやってみないか」ということだった。

○どう返事したのか。

●私は「現状では一生、移植を受けるのは無理。2年でも3年でも持てば、その間だけでも透析をしなくてすむ。ひょっとして、もう少し長く持ったらラッキー」と思い、即「お願いします」と返事した。迷いはなかった。

○術後の経過は。

●最初は尿たんぱくが少し出ていて、やはり駄目になるのかなと思った。でも2、3カ月すると、たんぱくはピタリと止まって、それからは一切出なくなった。全く正常に機能している。

○今の生活はどうか。

●今年で14年目になるが、今も普通の人と変わらない生活ができている。以前のように元気になりで、定年まで働き、その後も嘱託で働いている。移植のおかげで、本当に快調だ。

○修復腎移植が表面化したときの日本移植学会の反応(バッシング)は、どう映ったか。

●一言でいえば理不尽。納得できない。万波先生のやり方が悪かったということは、多少はあると思う。ただ、その問題と修復腎移植の評価は別だと思う。自分自身がそういう腎臓をいただいて元気になっていて、だれからも文句は出ていない。なぜ全面的に否定するのか、理解できない。患者の声を全く聞いてくれないと思った。

○修復腎移植の問題が起きた直後、「移植への理解を求める会」を立ち上げた。その趣旨は。

●私を含め、移植手術によって、たくさんの人を救ってきた万波先生が、むちゃくちゃなことをやっていると非難され、医師免許を剥奪されそうな感じになっていた。私たちの会が加入している全国の移植者団体「日本移植者協議会」も、学会とまったく同じ論調で批判を始めたので、私たちが先生を支えないといけない、多くの人たちに真実を知ってもらいたいと、立ち上げた。

○患者の立場から見て、修復腎移植のメリットは。

●生体腎移植は、健康なドナーの体に傷をつけるため、提供する方も、もらう方も、心の葛藤がある。それに比べ、修復腎移植は治療のために捨てる腎臓を利用するわけだから、その葛藤がない。仮に手術が失敗しても、先生も患者も、気が楽ということがある。

○一度移植を受けた患者の立場からみた修復腎移植は。

●移植をすれば本当に長期間、元気で生活できる。移植は本当にすばらしいと分かっているので、こんな宝の山を、みすみす捨ててしまうのはもったいない。学会の先生方は何の検討もしないで、全部駄目だと言っている。その理由が理解できない。

○原告団のメンバーが移植を受けられず、次々と亡くなっている。どんな思いでいるか。

●裁判も5年目、この問題が起きてからは8年になる。その間にいろんな人が亡くなっている。早く修復腎移植を正当に評価し、再開していただきたい。海外では絶賛されているのに、日本の学会だけが「駄目だ、駄目だ」と言っているのはおかしいと思う。「現時点では妥当性がない」と言ったまま、その可能性を探ることもせず、かたくなに否定しているのは、医者としてどうかと思う。

患者さんを救うために移植を進めるのが移植学会のはず。古い医学的常識でバッサリ切って、後は他人事のように知らん顔。そんなことが許されるのか。厚労省はスタンスを変えて「患者さんのために臨床研究をやってください」と言っている。その臨床研究に対しても、足を引っ張るのは一体どうなっているのか。

○この裁判の判決に期待するところは。

●今どんどん亡くなる方々を一人でも早く助けていただきたい。学会の先生方が態度を変えざるを得ないような、温情のある判決をしていただきたいと思う。


医学的常識に基づき発言 大島 伸一証人(日本移植学会元副理事長)

被告大島代理人 修復腎移植、病腎移植に対する考えは。

大島証人 医学界は、それまでに行われていなかったような医療に対して、標準的医療と比べて、その医療がどういう水準にあるのかということを、社会にきちんと説明していく責任があると私は考えている。そういう点から、この問題をどう理解し判断したらいいかと考え、現時点ではこうすべきだと社会に説明してきたつもりだ。

 (この問題について)全体として、やめるべきだという意見が圧倒的に強かったが、私はどんな医療でも全面的禁止はするべきでないと発言した。100年前にすばらしいと言われていたことが何十年後かに、とんでもない医療ということになった例もあれば、その逆もある。そのことから考えれば全面的禁止はふさわしくないと発言している。

○万波先生が行ってきた修復腎移植を、どう見ているか。

●こう言うと「何だ調子がいい」と言われるかもしれないが、私は万波先生を移植医として高く評価してきた。私は一貫して普通の病院で医療を行ってきた。彼も私と同じような環境にいたので、本当に努力して移植をやってこられたと思う。

十数年前、私は厚労省の臓器移植委員会腎臓部会の委員長になった。そのとき、一番最初に万波先生を委員に推薦して、引き受けてくれた。委員はほとんどが大学関係者で、一般病院で移植をされている方は極めて少なかった。そういう意味で非常に高く評価していた。ただ、彼は委員会には一度も出席されなかった。

○悪性腫瘍を持つ腎臓の移植について、現代の医学界はどのように考えているのか。

●現在の見解がどうかは、私は知らない。長寿医療研究センタ-に移ってからは10年以上、長寿医療に専念していて、(移植医療の)論文も読んでいない。学会にもまともに出ていないので、現在の医療水準、医療状況がどうなのか、私には分からない。

 病腎移植が問題になったときは、担癌患者からの臓器移植はするべきでないというのが、医学界の常識だったと理解している。免疫抑制をすると、免疫機能が低下する。そして癌は免疫機能が抑制されると、増殖しやすいというのが通説だった。したがって、患者の臓器に癌がある場合は、その癌を取っても、普通の人よりはるかに高い確率で癌が再発する。そういう説が一般的なので、禁止されていたと理解している。

○ネフローゼの患者さんの腎臓を全摘して移植することについては、どうか。

●当時の医学の常識では、ネフローゼの患者さんの臓器が移植に使われたという例を知らなかった。腎臓学会や内科学会の中でも、移植に使っていいという根拠はどこにもないという見解もあった。

●最後に病腎移植の是非を、司法が判断することについて、どう考えるか。

●それは私の理解を超えたところだ。ただ言えることは、私は医療の専門家で、たまたま学会の副理事長といった立場で、社会と直接向き合うことになった。今、。社会ときちんと向き合って、どうしていくのかということを抜きに、医学界の存在価値はないと思う。

特に札幌医科大学で行われた心臓移植が問題になり、医療不信を招いてから、日本の移植医療は、世界の水準に比べ、30年ぐらい遅れたと私は思っている。あの経験から、社会の理解のもとに医療を進めていかなければ医療はあり得ないということを、私は学んだたつもりでいる。病腎移植の問題も、その考え方にのっとって対応すべきだろうと考えてやってきた。しかし、私たちは患者さんに訴えられた。本心を言うと、困ったな、なぜ訴えられなければいけないのか、と納得がいきにくいところがある。

薦田弁護人(原告ら代理人) 透析を受けている患者さんが、臨床研究として保険適用のない移植を受ける経済的余裕はあると思うか。

大島証人 非常に難しいと思う。

○「使える腎臓は元に戻せばいい」と発言されているが、現実には、自家腎移植はほとんど行われていないのではないか。

●少なくとも私は四十数例の経験がある。日本全体の実態はよく分からない。原則論を述べているだけだ。

○「腫瘍を取り除いても、かなり高い確率で再発する」「移植を受ける患者は免疫抑制剤を使うため、免疫機能が低下し、通常より癌になりやすい」「癌の臓器を(修復したものでも)移植することは常識でありえないし、医師として許されない」。これらの先生の発言の根拠は何か。

●それは当時の学会の常識といってよいのではないか。

○その常識の根拠は何か。

●その当時までの状況を見ると、そういった事実がある。

○その事実の根拠は何か。

●それはデータを見れば明らかだ。

〇どんなデータか、

●たとえば国際移植学会や日本移植学会のデータだ。

○先生は陳述書の末尾に「癌のある腎臓などの移植については、世界的に見ても、ようやく医学的検討が始まりかけた段階」と書いてある。その根拠は何か。

●私の耳学問の理解だと、その程度にとらえていただくと、ありがたい。この10年、私は移植の論文を読んでいないし、学会にも行っていない。

○ようやく検討が始まりかけた段階ではなく、世界的には既に認められているのではないか。

●私が現場から退いてから相当の時間がたっているので、自信を持って答えることはできない。

○部分切除と全摘の問題について、学会関係者は「部分切除が標準医療で、腎機能を温存すべきだ。全摘はドナーにとって不利益だ」と発言しておられる。先生も同じ考えか。

●もちろんだ。

○最後に、腎不全に苦しむ患者さんたちから提訴されたことについてどのように受け止めているか。

●こんな悲しいことはない。私も患者さんたちのために、家庭も何もかも犠牲にしてといえば大げさだけど、やってきたという自負はある。それなのに、患者さんから訴えられるとは。こんなつらいことはない。


リスクより利益が大きい 光畑 直喜証人(移植医)

山口 直樹弁護士(原告ら代理人) 「移植に使える腎臓なら患者に戻すべきだ」という批判、つまり自家腎移植を積極的に行うべきだという批判があるが、どう考えているか。

●(自家腎移植は)非常に患者さんの負担があるから、全国でも非常に少数例しか行われていない。大きな大学でも、腎癌に対しては、自家腎はほとんど行われていない。

○平成18年10月に臓器売買事件が発生するまで、修復腎移植はドナーの腎臓摘出、レシピエントへの腎臓移植、いずれも保険適用はされていたか。

●私のところでも、病腎移植は1991年から始めた。第1例は動脈瘤の患者さんで、当然、レセプト(診療報酬明細書)も請求も、ふつう通り行われ、受理されている。

○腎臓に癌ができた場合、直径4㌢以下の場合の全摘と部分摘出の比率はどのようなものだと認識しているか。

●現在は、どちらも標準治療だが、当時は70%ぐらいが、全摘だったと思う。

○修復腎移植を行っていた当時、他人の癌が移植によって移るかどうかという問題について、どのように考えていたか。

●絶対に移らないとは、患者さんらには言っていない。可能性は非常に少ないという事実に基づいて進めてきた。100%否定することはできない。、

○では、修復腎移植を希望する患者さんに対して、どのような説明をしていたか。

●リスクは絶対に否定できないが、リスクよりも、透析の患者さんが置かれている境遇、経済的、精神的、肉体的な疲弊などを考えると、ベネフィット(利益)がよっぽど大きいということで進めてきた。われわれの病院ではインフォームド・コンセントをしたうえで、患者さんの了解を得て、移植をしてきた。

 

日本発の世界に誇れる医療 難波 紘二証人(病理学者)

光成弁護士(原告ら代理人) 前回の証人尋問で、吉田さんが、癌がドナーからレシピエントに移る可能性が0・1%であったとしても、許容できないと言われた。これについてはいかがか。

難波証人 リスクはどんな医療でもある。透析患者さんの置かれている状況は、5年生存率が60%しかない、その現実を見た場合、社会復帰のためには移植をしたらよいということを、経験から知っている。今を生きるためには、リスクを少し許容して、ベネフィットを取るというのが鉄則だ。だから、0・1%(でも許容できない)というのは、全くナンセンスだ。リスクとベネフィットをどう考えるかということに尽きると思う。

○被告の高原史郎さんがされた修復腎移植の成績の解析には、どういう問題があるか。

●第1の問題は、瀬戸内グループが行った修復腎移植42例のうち、市立宇和島病院が絡んだ25件の症例しか扱っていないことだ。呉共済病院と宇和島徳洲会病院の症例が扱われていない。それから、統計に用いられた方法も明示されていないことがある。

○修復腎移植は海外の評価が高いと、陳述書に書かれている。それには、どんな理由があるのか。

●人口100万人当たりの死体腎の提供率は日本が0・6人、これに対して、スペインは50人。70倍近い差がある。世界を回ってみると、日本が移植先進国だなんて、だれも思っていない。日本の医学の他の領域では全部トップを走っているのに、何で移植医療だけが遅れているのかとみている。それが「ジャパン・プロブレム」という移植の世界の業界用語になっている。

 そこで「修復腎移植を日本が始めた」とか、「これでドナー不足を解消する方向に行く」と、評価が高い。日本が自助努力で問題を解決するだろうという期待感がある。そのために、万波論文が国際学会で表彰されたのだと思う。

○海外の学会関係者は、なぜ日本の学会が修復腎移植に反対するのかと、不思議に思っているようなこともあるのか。

●2007年にドイツのエッセンで開かれた臓器提供に関する学会で、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校の女医さんに「日本で臓器移植が進まないのは、本当のところ、パターナリズムを捨ててないのじゃないか」と言われた。

患者さんが理解して治療の方法を選ぶのではなくて、医者が最適の方法を選ぶというのが、パターナリズムだ。確かに、患者さんの立場に立った医療が行われていない。相変わらず、医者が「これはいい。これは悪い」と指示を出している。そういう意味では「口で言っていることと、心の中で思っていることが違うかもしれない」と、私は答えた。

○前回の証人尋問で、吉田証人が癌の持ち込みについて「0・1%でもあったらだめだ。数十年後でも1例も出ないと認められない」という趣旨の証言をされた。この見解はどうなのか。

●ばかばかしい。医療はそういうものじゃない。「0・1%の危険性があるから、医療行為をやめる」言われたら、患者さんに殴られる。

私の母は75歳のとき、脳動脈瘤が見つかり、主治医の先生に手術をお願いしたら、「成功率は7割。30%は悪いけど失敗したら命を落とすかもしれない。どっちにするか決めてください」と言われた。現場の医療はその程度のリスクで動いている。母は30%のリスクでも手術を受けたから、90歳まで生きられた。

○欧米では、日本より献腎が多いのに、ドナーの拡大にマージナルドナー(高齢者や糖尿病患者など少し枠から外れたドナー)を対象にするなど努力している。日本はドナーが圧倒的に不足しているのに、学会が修復腎移植の導入に反対する。その学会の反対理由を、どう見るか。

●これまでの展開をみると、大きな論点が三つあったと思う。4学会が声明を発表した時点では、修復腎移植を批判する論理は「見たことも聞いたこともない医療。海外では行われていない」というものだった。その後、「癌が移ったらどうするのか」という問題が出てきた。日本で最初に行われた腎移植は病気腎を使っている。したがって、病気腎移植を否定したら、自分たちの先人を否定してしまうことになる。先人を否定して、どうするのかということだ。

国内では過去、病気腎移植が70例ぐらい行われている。それが明らかになると、論点が変わってきた。「小径腎癌を移植すると癌が移る」というものだが、米国でも欧州でも、転移した例は一つもない。

 次に、徳洲会が厚労省に臨床研究の結果をもとに、厚労省に先進医療の申請をしたら、4学会が厚労省に、修復腎移植を認めるなという要望書を出した。そこで、また論点が変わっている。「ドナーの不利益になる」というものだ。「腎臓を全摘したら、命が短くなる」と言っている。それを言っちゃ、おしまいだろうと、私は言いたい。

それを言えば、健康なドナー、親族から腎臓を取っているのは、犯罪になってしまう。

つまり、自分たちがやってきた生体腎移植も否定しまうことになる。自己矛盾していると思わないのかと、私は思う。

 修復腎移植は「日本発の世界に誇れる医療」だ。透析患者さんは毎日、何十人と亡くなっている。それを、もう8年も見殺しにしているわけだから、早く公的な医療として再開することを期待したい。学会の言い分は、論理として全部破綻している。なんとしても修復腎移植禁止を貫きたいという執念の産物としか思えない。


 ニュース報道から                                   

 
▼病気腎移植賠償訴訟 原告・被告側の証人が賛否証言 松山地裁

病気腎(修復腎)移植をめぐる日本移植学会幹部らの発言で同移植を受ける権利を奪われたなどとして、県内外の腎不全患者らが学会の現・元幹部5人に計約6千万円の損害賠償を求めた訴訟の第15回口頭弁論が25日、松山地裁であり、学会幹部や移植者らが同移植に対する考えを証言した。
 原告側の証人で透析患者の藤村和義さん(67)=広島市=は、食事制限や1回4時間かかる透析の現状を説明し「移植を認めてほしい」と主張。14年前に病気腎移植手術を受けた原告団長の野村正良さん(64)=松山市=は「いつ死ぬか分からない状況だったので、病気の腎臓でも問題なかった。移植を受け、元気に生活できている」と述べた。
 被告側証人の吉田克法同学会理事(60)は「病気腎移植は未来永劫(えいごう)禁止されるとは考えないが、尿管がん(を取り除いた腎臓)を提供された患者の生存率が悪いなど現段階では安全が確認されていない。0・1%でも危険性があるならば推奨できない」と証言した。                           

(平成26年2月26日付愛媛新聞)


▼病気腎移植賠償訴訟 学会元幹部ら3人証人尋問 

病気腎(修復腎)移植をめぐる日本移植学会幹部らの発言で同移植を受ける権利を奪われたとして、県内外の腎不全患者らが会の現・元幹部5人に計約6千万円の損害賠償を求めた訴訟の第16回口頭弁論が18日、松山地裁であり、被告本人を含む3人の証人尋問をした。
 被告の一人で同学会元副理事の大島伸一国立長寿医療研究センター総長は、がんの腎臓を移植すれば再発するなどとの自身の発言について「当時の医療水準がどのようなものだったかを述べただけ」と主張。厚生労働省が同移植の原則禁止の判断を示したガイドラインについて、学会幹部らには「決定権がなかった」とし、発言とガイドライン改定の因果関係をあらためて否定した。
 原告側が申請した呉共済病院の光畑直喜医師は「移植によるがんの転移がないとはいえないが、透析患者の負担を考えればメリットが多い」と証言。広島大の難波紘二名誉教授は、移植でがんが転移した例は確認されておらず、欧米の研究者は危険性を否定していると指摘し「(病気腎移植は)日本発の世界に誇れる医療。公的医療として認められることを期待する」と述べた。訴訟は次回期日の7月1日に弁論終結予定。  (平成26年3月19日付愛媛新聞)




6月1日・宇和島6回定期総会開く

NPO法人移植への理解を求める会は、6月1日(日)午前11時から、宇和島市弁天町の「きさいや広場」研修室で、2014年度(第6回)定期総会を開きました。役員と正会員計16人が出席。2013年度の活動報告と決算報告、2014年度の活動計画、役員改選などの議案を原案通り、可決しました。

活動計画では 1)修復腎移植推進のための啓発活動 2)臨床研究のレシピエント選定確認委員会開催 3)修復腎移植訴訟の支援活動 4)会報発行 5)ホームページの運営-などの事業を、引き続き実施していくことを確認しました。



報第14

(通算30)2014年

6月20

(金)発行

発行者 NPO法人移植への理解を求める会  理事長 向田 陽二

798-4101愛南町御荘菊川2290    電話085-74-0512

編集者                  副理事長 野村 正良

       〒791-8006松山市安城寺町1746-8    電話089-978-5434

発行所                  事務局長 河野 和博

       〒790-0925松山市鷹子町9282     電話089-970-3943


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by shufukujin-kaihou | 2014-07-07 19:18 | NPO会報第14号(30号)
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