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NPO法人会報第21号(通算第37号)


 NPO移植への理解を求める会 会報第21号 
        

来月・松山で第8回定期総会

NPO法人移植への理解を求める会は、6月19日(日)午前11時から、松山市道後姫塚のにぎたづ会館(電話089-941-3939)で、第8回定期総会を開きます。総会では、前年度の活動報告、決算報告、本年度の活動計画、予算案などを審議します。

 講演会やイベントはありません。参加対象者の理事と正会員の方は、よろしくお願いします。

問い合わせは河野和博事務局長まで。電話089-970-3943   


ニュース報道から                         

宇和島徳洲会病院の「病気腎移植」

進む臨床研究17例に

 がんなどの患者から腎臓を摘出し、病気の部分を取り除いて別の腎臓病患者に移植する「病気腎(修復腎)移植」の臨床研究を医療法人徳洲会が続けており、2009年以降、これまで17例が実施された。
 国は「原則禁止」としており、保険は適用されていないが、徳洲会側は来年初めにも、一部保険適用を求め厚生労働省に先進医療の適用を再申請する方針だ。
 病気腎移植は06年、宇和島徳洲会病院(宇和島市)の万波誠医師(74)らが実施していたことが明らかになり、妥当性が議論になった。万波医師らは透析患者を救う、生体腎・死体腎移植に次ぐ「第3の道」と主張したが、日本移植学会などは、がん再発のリスクを指摘し、安全性が認められていないと批判。厚労省は07年、「現時点では医学的に妥当性がないとされている」とし、臨床研究として実施する場合以外は禁止すると決めた。
 徳洲会によると、臨床研究は親族間では臓器提供者(ドナー)の病気を限定せず、第三者間では腫瘍が4センチ以下の小径腎がんが対象。移植を受けた17人のうち1人が術後に、2人は透析を再開した後に亡くなった。がんの再発例はないという。
 徳洲会は第三者間の10例の経過をまとめ、「移植して32~58カ月経過するも腎機能は良好で、がん再発はない」とする論文を今年8月、移植の国際専門誌に発表した。
 先進医療は11年10月に申請したが、厚労省の専門家会議は12年8月、手術後の健康状態のデータが不十分などとして認めなかった。病院側は10例の論文データも添え、来年初めにも再申請する計画。
 臨床研究の責任者、東京西徳洲会病院(東京都)の小川由英医師は「移植を切望する透析患者にとって推奨できる治療法で、ドナー不足の解消にも役立つ」と話す。
 日本移植学会は「一般的な治療としての病気腎移植は認めていない」との姿勢を変えていない。

 夫から妻へがん摘出腎の現場 「透析患者の希望」

 目の前のコンピューター断層撮影(CT)画像には男性の右の腎臓が映る。医師が示した丸い出っ張りはがん。この腎臓は腫瘍を取り除き、妻に移植される。7月に宇和島徳洲会病院で実施された16例目の臨床研究手術に立ち会った。

 手術前日の7月7日、同病院の診察室。既に入院していた臓器提供者(ドナー)の東京都東村山市の団体職員島田道明さん(65)と移植を受ける妻久仁さん(63)を前に、万波誠医師が手術の説明を始めた。腎臓の模型を手にしている。

 「この下に植え付ける」。右の腎臓の下を指さす。「血管が腫瘍にひっついとる。ただ、私らは成功する以外ないと思っとる」と言われると、夫婦はうなずいた。
 久仁さんは2012年に腎不全で食事制限を始めた。体調は悪化し、睡眠障害や食欲不振になり、14年9月に透析に。道明さんは腎臓の提供を決めたが、検査で右の腎臓に2・7センチの腫瘍と0・9センチの結石が見つかった。
 手術について何度も説明を受けたという久仁さん。「他人の体に移植すればがんが再発する可能性は低いと聞いた。不安はありません」
 国内の慢性透析患者は30万人を超える。日本臓器移植ネットワークによると、腎移植の希望登録者は約1万2千人だが、実際に移植を受けられるのは1%程度という。
 万波医師は「日本は本当に臓器不足なんよ。小さいがんなら取れば再発せんといわれている。捨てる腎臓が使えれば臓器不足を解消する手段になる」と繰り返し語った。
 7月8日午前11時50分、道明さんの体にメスが入った。執刀医らが手術台を囲み、腎臓周りの組織を外していく。
 午後2時20分ごろ万波医師が現れ、隣の手術室で、砕いた氷を容器に入れ、その上にガーゼを敷いた。取り出した腎臓を冷やす準備だ。
 「いつでも取れます」。声が上がる。腎臓が取り出された。
 隣室に運ばれた腎臓は氷の上で冷やし、血管から保存液を入れる。万波医師が腫瘍の周りを小さなはさみで小刻みに切る。「思ったより大きいな」。薄い灰色の腫瘍は15分ほどで切り取られた。
 保存液を流し、漏れがある血管の傷を見つけ糸で縫っていく。結石も取り出した。そして腎臓は久仁さんの体内に。素早く血管をつなぎ午後9時50分、手術は終了した。

 久仁さんの経過は良好で、8月11日に退院し、現在も腎臓は正常に機能している。「体が軽く、こんな元気なのは久しぶり。移植を望む透析患者の希望になるのではないかと思う」。声が明るかった。

一般治療と認めていない

 【日本移植学会広報委員長で奈良県立医科大の吉田克法病院教授の話】 日本移植学会の意見は変わっておらず、病気腎移植を一般的な治療とは認めていない。腎臓を丸ごと摘出するのは臓器提供者(ドナー)に不要な負担をかける。4センチ以下の腎がんであれば、術後の腎機能が良好に保たれるので腫瘍だけを切除するのが望ましい。今後の経過を慎重に見ていきたい。かつてあれだけ議論を巻き起こしたので、研究過程や患者の経過を積極的に情報公開してほしい。

患者の自己決定権尊重を
 【岡山大の粟屋剛教授(生命倫理学)の話】 かつては論争があったが、今では国際的には病気腎移植を受けた患者にがんが転移する可能性は極めて低いとされ、国内の臨床研究でもがんの再発は見られていない。仮に病気腎であっても苦しい透析から逃れるために移植を受けたいという患者の自己決定が医療者や医学界によって否定されるとすれば、生命倫理の視点から問題だと思う。第三者間で実施する場合、臓器の配分が公正に行われる仕組みづくりも必要になるだろう。

                    (2015年12月8日付、愛媛新聞)                   


治療摘出臓器を移植に

米国組織が指針改正案まとめる

 【ワシントン共同】米臓器移植ネットワーク(UNOS)は7日までに、治療目的で摘出された臓器を別の人に移植する医療の推進に向けた移植指針の改正案をまとめた。臓器提供者が恒常的に不足する中、移植医療に生かされず捨てられる臓器を少しでも減らすのが狙いで、年内にも適用される。
 摘出された病気の臓器でも、移植を受けた患者の体内では機能する場合がある。日本では宇和島徳洲会病院の万波誠医師らが、腎がん患者などから摘出した腎臓の病変部分を切除して移植する「病気腎移植」として臨床研究を進めているが、日本移植学会などは「医学的妥当性がない」と反対している。
 UNOSの既存指針では、臓器提供者にとっては健康上の利点がない生体移植と同じ扱いで実施条件が厳しいが、必要な手続きを一部簡素化し「摘出手術を受けた患者が、より簡単に提供者になることを選択できるようにした」(UNOS関係者)とし、正規の移植医療として位置付ける。
 提供される臓器は、腎臓がん患者の腎臓や、メープルシロップ尿症患者の肝臓なども想定している。主には、肝臓移植を受けた患者から摘出した肝臓を別の重病患者に玉突き式に移植する「ドミノ肝移植」の増加を期待しているとしている。     (2016年2月8日付。愛媛新聞)


 病気腎 先進医療審査へ 

宇和島徳洲会再申請 厚労省受理方針

 腎臓がんなどの患者から摘出した腎臓を腎不全患者に移植する「病気腎(修復腎)移植」について、厚生労働省は14日までに、先進医療の適用を求める宇和島徳洲会病院(宇和島市)の再申請を受理する方針を固めた。6月にも同省部会で有効性や安全性などを審査する。(3面に関連記事)
 病気腎移植は臨床研究としての実施は認められているが、保険は適用されていない。先進医療に指定されると、治療費のうち、手術を除く入院、投薬などの費用に保険が適用される。病院側は臓器提供者不足が解決できると主張しているが、日本移植学会はがん再発のリスクを指摘し、安全性は認められていないとの見解を示してきた。
 病院側は2011年10月に先進医療への申請をしたが、厚労省の専門家会議は12年8月、手術後の健康状態のデータが不十分などとして認めなかった。
 徳洲会グループはその後、10例の手術の経過をまとめ「がんの再発はない」とする論文を海外の専門誌に発表するなど、再申請に向けて準備を進めていた。

「今度こそ承認を」 喜びと期待の声

 2012年8月に病気腎(修復腎)移植の先進医療への適用が不承認と判断されて以降も、臨床研究を続けながら厚生労働省と折衝を重ねてきた宇和島徳洲会病院。厚労省が再申請を受理する方針を固めたことを受け、患者団体は14日、喜びの声を上げ、臨床研究に携わる同病院の万波誠医師(75)は冷静に受け止めた。
 同移植を推進するNPO法人「移植への理解を求める会」(松山市)の向田陽二理事長(58)は「待望の知らせ。苦しむ人を一日でも早く救うため、患者の気持ちに寄り添い、今度こそ承認してもらいたい」と期待。年間2万人の透析患者が死亡しているという現状に触れ「全国からまだかまだかという声を聞く。命を助けられる医療がある以上、否定するだけでなく一つずつクリアして実現に向かってほしい」と力を込めた。
 えひめ移植者の会の野村正良会長(67)は「先進医療への申請が移植再開の第一歩」と安堵(あんど)。米国では治療で摘出した臓器の移植が進んでいると指摘し「患者を第一に考え、国内でも前向きな努力が進むよう願う。審議を見守りたい」と述べた。
 万波医師は「患者さんのためにも早く保険適用されたらいいという思いだけ。修復腎は今まで行ってきた医療の延長上にあり、とてつもないことでも何でもない」と話した。(伊藤絵美)

(2016415日付、 愛媛新聞)


出版
                               

修復腎移植めぐる医療ドラマ

「禁断のスカルペル」が単行本に

日本経済新聞に昨年7月から今年5月末まで約1年間にわたり連載された久間十義氏の小説「禁断のスカルペル」が、日本経済新聞出版社から単行本で出版されました。修復腎移植をめぐるドラマで、主人公の女医が万波先生をモデルにした医師のもとで修復腎移植にかかわっていくという設定です。「医療とは何かをテーマとした小説で評判を呼びました。

 <内容紹介> 東京での不倫騒動の末に、離婚で子供を引き離されてしまった女性主人公が流れ着く「伊達湊市」は311の地震と津波で甚大な被害を被った架空の港町。東北の太平洋側を主な舞台に311をはさんで15年間の物語が紡がれる。主人公が「医療とは何か」を突き詰めることになるのは、この病院で行われていた病気腎移植のチームに加わってから。腎臓疾患の患者から捨てられてしまう腎臓を、病変部分を取り除いたうえ

で人工透析を必要とする慢性腎不全患者に移植する手

術は「修復腎移植」と呼ばれる。実際に現在の医学界でも公には認められていないが、人工透析の負荷に耐えられない患者側からは待望論は日に日に高まるばかり。き

わめてデリケートでホットなテーマを扱った野心作である。

本作では、臓器売買疑惑に女性主人公が巻き込まれることで、地方の小都市で行われていた、知られざる病気腎移植の実態が明るみに出て、国との暗闘が繰り返され、訴訟合戦ともなり、といった「医療とは何か」という赤ひげ先生から変わらない普遍のテーマを巡って物語は展開していく。そこに肉親の情が絡まり、感動の予想外のクライマックスを迎える。 連載中は多くの医療関係者の注目を集めた。クライマックスでの移植学会のボスのつぶやきは、現在の日本の医療に対して大きな疑問を投げかけている。(Amazonより)

報第21

(通算37)2016年

5月18日(水)発行

発行者 NPO法人移植への理解を求める会  理事長 向田 陽二

798-4101愛南町御荘菊川2290    電話085-74-0512

編集者                  副理事長 野村 正良

       〒791-8006松山市安城寺町1746-8    電話089-978-5434

発行所                  事務局長 河野 和博

       〒790-0925松山市鷹子町9282     電話089-970-3943


by shufukujin-kaihou | 2016-05-22 14:50 | NPO会報第21号(37号)
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